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翌朝、ハデシュの空はまだ薄い霧に包まれていたが、東広場はすでに人で埋め尽くされていた。


第二ラウンドともなれば、もう遊び半分ではない。本当に強い者しか残っていない。




クロウは無表情のまま会場に入り、上着のフードを深くかぶる。


控室の片隅に腰を下ろし、周囲の顔ぶれをじっと観察する。


昨日のような軽い笑い声はもうない。


響くのは足音、武器の金属音、そして時折交わされる鋭い視線だけだった。




「今回は、簡単にはいかないな……」


クロウは拳を強く握り、心の中でつぶやいた。




その時、魔力スピーカーから声が響いた。


「第二ラウンドの組み合わせ抽選を開始します!」




観客席から歓声が上がる。


次々と読み上げられる名前に会場が沸く。


有名な強豪同士が当たれば、ざわめきはさらに大きくなる。




クロウは黙って耳を傾けていた。


……そして。




「第十二試合――アイスデン・クロウ 対 ハタカ・カゴ!」




その瞬間、会場全体がどよめいた。




「ハタカ・カゴ!? 二年前トップ10に入ったハタカ・レンツの弟じゃないか!」


「マジかよ、レンツと同じくらい強いって噂だぞ!」


「いや、弟の方が速いって聞いた。‘若き狼’って呼ばれてるんだ。」




クロウはほんの一瞬だけ動きを止める。


「ハタカ……カゴか。」




掲示板に表示された名前をもう一度確認し、胸の鼓動が速くなるのを感じる。


ただの大会じゃない――本当の戦いが始まる。




周囲ではまだざわざわと噂が飛び交う。


「クロウって誰だ? 一回戦で火属性の大技を撃ったってやつか?」


「でもカゴは炎に強いぞ。面白い勝負になりそうだ。」




クロウは無言のまま席を立ち、フードを深くかぶり直して控室を出た。




帰り道、魔力新聞を一部買って読みながら歩く。


そこにはハタカ家の特集記事が載っていた。


北部の戦士一族、幼少期から厳しい訓練を受け、兄レンツはトップ10に入った実績あり。


弟カゴは14歳にして“若き狼”の異名を持ち、速度と攻撃回数では兄をも上回ると評されている。




クロウは新聞を折りたたみ、ポケットに突っ込むと、鋭い目で前を見据えた。


「速さ、ね……いいだろう。どっちが速いか、試してやる。」




宿に戻るとしっかり夕食を取り、その後すぐに練習を始めた。


夜の中庭で、パンチ、キック、回避動作を何十回も繰り返す。


筋肉が痛み、汗が背中を伝うまで止まらなかった。




クロウは知っていた。


明日の戦いは、ただの試合じゃない。


――自分がこの街で生き残る価値があることを証明する戦いだ。

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