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クロウは控室に戻り、椅子にかけてあった自分のコートを手に取ると、ゆっくりと羽織って外へ出た。


初めての試合は終わり、勝者として名前が広まっているのだろうが、クロウはそれよりもただ安堵していた。




闘技場を後にしたクロウは、昨日働いた食堂へ足を運んだ。


店主はテーブルを拭いていたが、クロウを見ると満面の笑みを浮かべて手招きした。




「おお、昨日の坊主か! ほら、座れ座れ。」




今日の店は昨日よりも賑わっている。


客の声、皿の音、香ばしい匂いが店中に広がっていた。


クロウは片隅に座り、食事をする人々を眺めながら、なぜか胸が温かくなるのを感じた。




閉店間際、店主はクロウの前に大皿を置いた。


「今日はおごりだ。腹いっぱい食え。それと、もし金が欲しいならまた来い。仕事を用意してやる。」




クロウは深く頭を下げ、皿の料理をきれいに平らげた。


昨日の報酬のおかげで、40ジャックを払い三日分の宿を確保できた。


寝床があり、腹も満たされる――ほんの少しだが、街での生活が形になってきた気がした。




その夜、クロウは街をぶらついた。




夜の街は、まるで昼間とは別世界だった。


魔法灯が通りを照らし、石畳がきらきらと輝く。


人々の笑い声や酒場から流れる音楽が響き渡り、屋台の焼き肉やスープの匂いが漂ってくる。


クロウは深呼吸し、思わず笑みをこぼした。




だが、細い路地に入った途端、空気が一変する。




闇の中から六つの影が現れ、道を塞いだ。


ボロボロの服を着た若者たちが、不敵な笑みを浮かべてクロウを取り囲む。


先頭の一人がニヤリと笑い、近づいてきた。




「おい坊主、見ねえ顔だな。金、持ってんだろ? 見せてみな。」




クロウは無言で相手を見据えた。


心臓の鼓動がゆっくりになる。


こいつらはただの物取りではない――街に来たばかりの自分を狙ったのだと悟る。




別の一人が嘲笑するように言った。


「どうした? 黙っちまったか? それとも六対一でやる気か?」




クロウは薄く笑い、ゆっくりとコートを脱いで肩にかけた。




「……いいだろう。」




声は低く、しかし路地の静寂に響いた。




クロウは重心を落とし、足をしっかりと地面に構え、片手を前に、もう片手を後ろに引く。


目は鋭く、相手の一挙手一投足を逃さない。




「ははっ、ガキがやる気だぞ!」


一人が声を上げ、残りも笑い声をあげる。




しかし、クロウはまったく動じない。


呼吸を整え、体内の魔力を感じ取る。


炎が再び燃え上がろうとしている――そんな感覚が全身を駆け巡る。




狭い路地に、ぴんと張り詰めた空気が流れた。


六人が半円を描いて取り囲む。


それでもクロウの気迫は、一人とは思えないほど鋭く、相手の足が一瞬止まるほどだった。




「六対一か……いいさ。どっちが先に倒れるか、試してみろ。」

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