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ついに、クロウの番がやってきた。


魔力拡声器から響き渡るアナウンスが、会場中に広がる。




「――出場者、アイスデン・クロウ! アリーナへ入場!」




重々しい鉄の扉がゆっくりと開く。


暗い通路の奥からクロウが一歩踏み出した瞬間、


眩しい光が一斉に降り注ぎ、思わず目を細める。




どよめき、歓声、太鼓の音、名前を叫ぶ声――


すべてが波のように押し寄せ、胸の奥がドクンドクンと鳴り響いた。




対面の扉が開くと、対戦相手が現れた。


年の頃は十二、三。小柄だが、瞳は闘志に燃えている。




二人は中央で向かい合い、互いに手を取り合って握手を交わす。


審判が手を上げ、短く告げた。




「――位置につけ!」




二人はゆっくりと後退し、それぞれの持ち場へ立つ。


観客席は水を打ったように静まり返り、視線が二人に注がれる。




「――始めッ!」




笛の音が響いた瞬間、クロウの体が動いた。


迷いは一切ない。




拳を前に突き出し、全身の魔力を一点に集中させる。




「――はあっ!」




破裂音とともに、クロウの拳から巨大な炎柱が噴き出した。


燃え盛る火炎は轟々と音を立て、一直線に相手へと襲いかかる。


観客席から悲鳴混じりの歓声が上がり、熱気に顔を覆う者まで出るほどだった。




炎は十秒間、獣の咆哮のように暴れ続け、


黒焦げの痕跡を残してゆっくりと消え去った。




クロウが手を下ろしたとき、対戦相手はその場に倒れていた。


命に別状はなさそうだが、完全に気絶している。




一瞬の静寂――


そして次の瞬間、観客席が爆発したかのように沸き立った。




「な、何だあの炎は!?」


「信じられない……あんな威力、子供の魔法か?」


「誰だ、あいつは……!」




審判がクロウの手を高々と掲げ、宣言する。




「勝者――アイスデン・クロウ!!!」




割れんばかりの歓声が会場を包み込む。


立ち上がって拍手する者、口笛を鳴らす者もいた。




クロウは汗を滴らせ、息を荒げながらも、


その瞳には新たな炎が宿っていた。


さっきまでの戦いよりも、さらに熱く、さらに強い――


未来への渇望という名の炎が。

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