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049

クロウの足音が、灰色の石畳に乾いた音を立てて響く。


夕陽はすでに傾き、ハデシュの高層ビル群を黄金色に染めていた。


どれだけ歩いたのか分からない。ただ足は痛み、腹は空腹でうずく。




「今夜……どこで寝ればいいんだ?」


その思いが頭の中で何度も反響し、胸を締めつける。


周囲では、人々が笑い、話し、走り、商人が声を張り上げる――だが、自分はその輪のどこにも属していない。




その時、目に飛び込んできたのは、道端に設置された光る掲示板だった。


「若き才能祭 ― 本日締切」




クロウの足が止まる。


大会……そうだ。勝てば金が手に入るかもしれない。少なくとも、誰かが自分を見つけてくれるかもしれない……




思考より先に身体が動いた。


空っぽのバッグの紐を握り締め、クロウは駆け出した。


雑踏を抜け、魔法道具屋の眩しい光を横目に、息が切れるまで走る。




やがて、視界に巨大な建物が現れた。


青い魔石で作られたドーム型の屋根、その上に輝く文字――


「若き才能祭」




クロウは唾を飲み込む。建物は光り輝き、中から賑やかな声が溢れている。


深呼吸し、扉を押して中へ入る。




広い。天井は見上げても届かないほど高く、左右には土産物屋が並んでいた。


お守りやミニチュア武器、試合のロゴが入ったマントまで売られている。


しかし、受付前には人影はまばら。




「……間に合った。」




胸を撫で下ろし、受付へ歩み寄る。


カウンターの女性がクロウを一瞥する。


「登録かい? まず年齢確認をしてからだ。」




指示された白い部屋に入ると、中央に金属製の椅子と、高さのある機械が置かれていた。


青白く光る魔石が頭上でゆらめく。




白衣の男が言う。


「そこに座れ。目を閉じて。少し眩しいぞ。」




クロウは深呼吸して椅子に腰掛ける。


機械が低く唸り、青い光が体を走査する。


心臓が早鐘のように打つ。




俺……まだ十八じゃない。でも、もし何かバレたら……?




光が数回点滅し、やがて結果が表示された。


「推定年齢:13〜14歳」




男が頷く。


「条件クリアだ。受付に戻れ。」




クロウは思わず息を吐き出す。処刑台から降ろされたような気分だった。




再び受付に戻り、必要事項を記入する。


「名前は?」




「クロウ。」




「姓は?」




一瞬迷い、昔聞いたことのある適当な姓を口にする。


「……アイスデン。」




女性が魔法端末に入力し、小さな魔石プレートを差し出す。


「これが参加証だ。明日の朝、忘れずに持ってこい。」




クロウはそれを受け取ると、指先にほんのりとした温かさを感じた。


一日中失い続けていた希望が、かすかに灯る。




明日……勝てば、人生が変わるかもしれない。

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