030
長きに渡る修行の末、クロウが選んだのは――炎と雷。
破壊の炎、そして天を裂く稲妻――その力は二倍、三倍、いや四倍にまで跳ね上がる。
彼は高い鉄の箱の上に立ち、左手をカサキに向け、
右手をゆっくりと後ろに引いた。まるで見えない弓を引き絞るかのように。
「……!!」
掌から眩い光が迸った。
赤く燃え盛る炎と白く輝く稲妻が渦を巻き、一つの――炎雷の矢となる。
その光は空間を震わせ、徐々に伸びていき、ますます巨大になっていく。
バリバリバリ……!!
大地が震え、クロウの足元の鉄箱までもが唸りを上げた。
炎雷の矢はさらに膨れ上がり、その圧倒的な殺気が戦場を覆い尽くす。
カサキとユコンは目を見開き、瞳孔が縮み、息が喉で詰まった。
「……なっ……何だこれは……!?」
「まさか……二つの元素を同時に……融合させただと……!?」
二人はすでに限界を超え、身体は傷だらけ、青い炎と血でボロボロに崩れていた。
だが――その破滅の矢を前に、彼らの胸に残った唯一の感情は、ただひとつ。
それは――恐怖だった。
突如――
ドオオオオオンッ!!!
放たれる前に、雷炎の矢は激しく爆ぜた!
戦場の空は閃光に覆われ、大地は吹き飛び、鉄は震え響く。
クロウの身体は弾丸のように吹き飛ばされ、鋼鉄の壁に激突し、巨大な亀裂を残す。
煙と塵が渦を巻き、熱気がまだ漂う中、
カサキは口元を歪め、冷たく笑った。
「ハハ……結局その程度か。」
勝利を確信したかのように――
だが。
煙が次第に晴れていく。
瓦礫の中から、クロウがふらつきながらも立ち上がった。
全身は血に滲み、呼吸は荒い。
それでも、その瞳は決意の炎に燃えていた。
彼は足元の歪んだ鉄箱の上に立ち、
左手を前に突き出し――
右手をゆっくりと後ろへ引いた。まるで、見えぬ弓を引き絞るように。
周囲の空気が震える。
クロウの掌から、黄金の雷光が生まれ、弦のように張り詰めていく。
「バチ…バチ…バチィィッ!!」
電撃音が轟き、まばゆい光が闇を切り裂く。
圧倒的な力を秘めた光の矢が形を成す。
――だが、今回は違った。
黄金の稲妻が、次第に姿を変えていく。
輝く金色は、やがて冷たい蒼へと染まり――
まるで夜空を裂く嵐のごとき青光が、空間全体を震わせた。
そして、その蒼が極みに達した瞬間――
紅蓮の炎が突如として巻き起こり、蒼雷の矢を包み込む。
焼き尽くすのではなく、絡み合い、共鳴する。
まるで雷鳴と地獄の炎が一つに融け合ったかのように。
ドオオオオンッ!!!
クロウの足元の鉄箱は激しく震え、今にも砕け散りそうだ。
空気そのものがねじれ、炎と雷が絡み合い、
紅と蒼の巨大な矢が生み出される――その威圧感は天地を覆い尽くす。
カサキもユコンも、息を呑んだ。
瞳孔が収縮し、全身が凍り付く。
「……ありえない……!!」




