表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/124

025

部下の絶叫が戦場に響き渡った。


カサキは真紅に燃える瞳で彼に駆け寄り、抱きしめる。


「やめろぉぉ!! 俺の前で死ぬんじゃねぇぇぇ!!!」




その咆哮は空間を切り裂き、絶望と狂気を孕んでいた。




ユコンはその光景を見て、哄笑する。


「こんな状況でも仲間愛か? なら…一緒に地獄へ落ちろ!!」




滅炎が再び燃え上がり、今度は部下の両脚を狙う。


耳をつんざく爆音。


血肉が四散し、男の両脚は炎に呑まれて消えた。


腸を引き裂くような悲鳴が響き、やがて気を失い、カサキの腕の中で崩れ落ちる。




ユコンが狂気の笑みを浮かべ、一歩踏み出した瞬間――




「ドガァァン!!」


虚空から拳が飛来し、その顔面を直撃した。


骨が砕ける音。


ユコンの体は弾丸のように吹き飛び、厚い鋼鉄を貫き、漆黒の穴を穿つ。




彼が態勢を立て直す間もなく、血飛沫が上がる。


仲間の一人が腹を貫かれ、絶命する。


クロウは凍り付いたように目を見開いた。


「そ、そんな…あれはカサキ!? でも、なぜまだ立ち上がれるんだ…!?」




隣の仲間が震える声で呟く。


「まさか…“回復”のスキルを会得したのか…? この世界でも習得者はほとんどいないという、至高の技を…」




カサキは意識を失った部下を抱きしめたまま、ゆっくりと立ち上がる。


皆の眼前で、失われた両腕と両脚が再生していく。


血管が這い、筋肉が絡み、皮膚が覆っていく光景。


戦場全体が静まり返る。




カサキが顔を上げた。


その瞳は漆黒に染まり、光を失っていた。


暗黒の気配が全身から溢れ出し、空間を圧し潰す。


それはマナではない。


魂を凍らせる、原始の殺気だった。




クロウは拳を握りしめ、冷や汗を垂らす。


「クソッ…これじゃまるで…俺たち17人全員が、たった1人のカサキを相手にしてるようなもんじゃねぇか…!!」


黒クロは、その恐ろしい殺気に全身から冷や汗を流した。


彼は慌てて新しく習得した技を発動し、身体を鋼鉄で包み込む。


しかし、それは習得したばかりの未熟な技。自分でも持ちこたえられるか確信はない。


念のために、さらに外側にマナの膜を張り、二重の防御を作り出した。




その瞬間――




つい数秒前までクロの隣に立ち、話しかけていた仲間が、突然消えた。


いや、消えたのではない。


拳で吹き飛ばされ、叫ぶ間もなくどこかへ消し飛ばされたのだ。


残されたのは、漆黒の影――


そう、それは カサキ だった。




クロは慌てて巨大な炎を吐き出し、目前に広がる炎の壁を作る。


心の中で叫ぶ。


「俺は炎属性最強だ! この炎を奴が突破できるはずが…!」




だが次の瞬間、炎の中を漆黒の影が切り裂いた。


その速度は、肉眼では捉えられないほど。


炎の海の中から現れたのは、一撃の拳。


それがクロの腹を直撃した。




クロの全身を悪寒が走る。


外側のマナの膜は一瞬で消し飛び、


鋼鉄の鎧すらもろくもへこみ、内側の肉体に食い込む。


腹の奥で臓腑が爆ぜるような激痛が襲いかかる。




「ぐあああああああっ!!!」




クロの身体は弾丸のように吹き飛ばされ、大地を削りながら転がっていく。


口から血が滝のように吐き出され、視界は霞み、ぼやける目に映るのは――


すでに五人の仲間が地に伏した光景だった。




「あいつは…強すぎる…本当に強すぎる…!」




だが、まだ立ち上がる者たちがいた。


以前クロといざこざを起こした仲間が、カサキの正面からの一撃を受け止め、


直後に別の者が突撃して援護に入った。


彼らは――先ほどまでの雑魚とはまるで違う強さを見せていた。




そして――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ