表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/124

024

真紅 → 黄金 → そして――蒼炎。


深い海の底のような青き炎へと。




それはもはや通常の炎ではなかった。


灼熱と凍結を同時に孕み、地面を裂き、空気を凍りつかせる。


触れた瞬間、魂さえ焼き尽くすほどの力。




ユコンの体は完全に蒼炎の人影と化し、凄まじい速度で敵の大兄貴へと突撃する。


拳が振り下ろされた瞬間、蒼き炎はまるで燃え盛る津波のごとく戦場を飲み込み、大地に深い焦げ跡を残しながら轟音とともに爆ぜた。


戦況は完全に一方的になっていた。




砂を操る敵と戦っていたクロウでさえ、その光景に思わず動きを止める。


彼の瞳は大きく見開かれ、信じられないように呟いた。


「…あれが、本当に俺のデブ兄貴、ユコンなのか?」




かつては鈍重でだらしなかった姿はもう存在しない。


そこに立っていたのは、引き締まった肉体を持つ男。


赤と蒼の炎をまとい、天空にそびえるその姿はまるで炎の王。


クロウは全身を薄いマナの膜で覆っていたが、それでも肌が焼けるような熱気に汗が止まらなかった。




凄絶な戦いが続いたこの場に、もはや立っている者は二十人足らず。


その刹那――ユコンの姿が掻き消えた。




次の瞬間、彼は敵の大兄貴の眼前に現れ、拳を叩き込む。


分厚い鉄板すら貫通し、相手の口から血飛沫が吹き出す。




それだけでは終わらない。


ユコンは連打を浴びせ、拳が当たるたびに炎が肉体を焼き、無数の火傷痕が広がっていく。


敵の体は瞬く間に傷だらけとなり、衣服はボロボロに裂け落ちた。




その光景にクロウは震えながら呟く。


「これが…ユコンの力…?」




敵の大兄貴――カサキは、すでに意識を失いかけ、目は半ば閉じ、息も絶え絶え。


その姿を見た配下たちは恐怖に駆られ、一斉に逃げ出した。


だが、ユコンの放つ蒼紅のエネルギー球が次々と彼らを追い、爆ぜ、炎の柱となって飲み込む。




ユコンは一歩も止まらず、カサキの焦げ付いた髪を鷲掴みにし、顔を無理やり持ち上げた。


声は氷の刃のように冷酷だった。




「カサキ…今日で終わりだ。ここでお前を殺す。これで両方の組は清算だ。」




疲弊しきったカサキは、かすれた声で答える。


「…なら…殺せ。」


ユコンはカサキの焦げた髪を握りしめ、炎のような瞳で冷酷に告げた。




「知らないと思ったか…?


俺の手下を殴ったのは、お前の弟だろう。


お前が先に死に、その次はあいつの番だ。」




そう言い放つと、ユコンはカサキの体をぼろ切れのように投げ捨てた。


カサキの呼吸は荒く、視界は霞み、抵抗する力すら残っていない。




ユコンは顔を上げ、炎を集め始める。


蒼と紅の炎が渦を巻き、巨大なエネルギー球となって収束する。


熱気は地面を割り、空気を震わせ、まるで天が落ちてくるかのようだった。




彼はその手をカサキに向け、最後の一撃を放つ。




「死ねぇ!!」




閃光が走り、破壊の光線が放たれる――




その瞬間、一人の影が飛び出した。


カサキの最後の部下が、喉を裂くような声で咆哮し、魔法の防御障壁を展開する。




一枚、二枚、三枚――


三重の盾が重なり合い、ユコンの炎を受け止めた。




轟音が響く。


第一の盾は瞬時に砕け散る。


第二の盾もひび割れ、破片となって消える。


最後の第三の盾は数秒だけ耐えたが…やがて粉々に砕け散った。




エネルギーは止まらず、部下の両腕を貫き、血飛沫を撒き散らす。


だが、その衝撃で光線の軌道が逸れ、カサキを貫くことはなかった。




部下は悲鳴を上げ、両腕を焼かれながら膝をつく。


それでも瞳は揺らがず、必死に叫ぶ。




「兄貴…誰にも…触れさせはしない…!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ