019
仲間たちが後方で追い詰められ、悲鳴をあげているのが見える。胸が熱く燃え上がり、恐怖はすでに消えていた。
「誰も…死なせはしない…!!」
クロウは全力で駆け出し、躊躇なく棒を振り回す。
ゴッ! 頭に直撃を受けた男が崩れ落ち、血が飛び散る。
腕は痺れ、全身が悲鳴をあげている。それでもクロウの瞳は炎のように輝いていた。
敵に囲まれながらも、痩せ細った少年は堂々と立ち、獣のように戦い続ける。
全身傷だらけで、呼吸は荒く、今にも倒れそうなのに――それでもクロウは一撃、また一撃と振るい続けた。まるで一瞬でも止まれば、すべてを失ってしまうかのように。
戦場はまるで地獄のようだった。
火炎が空を焼き、水の奔流が地面を削り、稲妻が夜を昼のように照らす。
絶叫と咆哮、鋼のぶつかる音が混じり合い、耳が張り裂けそうだ。
クロウは胸を大きく上下させ、血まみれの体を奮い立たせる。
「ここで倒れるわけにはいかない…!」
目の前に立ちはだかったのは、砂嵐を操る巨漢だった。
奴が腕を振り下ろすと、視界を覆うほどの砂が巻き起こり、呼吸さえ困難になる。
クロウは手を掲げ、腹の底から力を解き放つ。
「風よ、切り裂け!」
突風が砂嵐を裂き、空気が一瞬にして澄み渡る。
その隙を逃さず、クロウはさらに両腕を広げた。
「燃えろ――炎槍!」
炎の槍が形を取り、敵の胸を貫いた。轟音と共に巨漢が地面に崩れ落ちる。
だが休む暇などなかった。
黒装束の男たちが十数人、一斉に襲いかかる。氷の刃、水の鞭、毒の煙が次々と飛んでくる。
クロウは咄嗟に地面に手を突きつけた。
「大地よ、守れ!」
岩壁がせり上がり、無数の魔法を弾き返す。爆風が走り、土煙が舞い上がった。
その影から一人の刺客が音もなく飛び出す。
音速のような速さ、そして鋭い刃――。
クロウの反応も遅れかけたが、全力でマナを脚に込め、同じ速さで動いた。
ガキィン!
二人の武器が激突し、火花が散る。
クロウは怒りの雄叫びを上げ、魔力をさらに高めた。
「雷よ――撃ち抜けッ!」
稲妻が走り、刺客を直撃する。男は絶叫を上げて痙攣し、そのまま倒れた。
息が荒く、汗と血が顔を流れる。だがクロウの瞳はまだ燃えていた。
仲間の悲鳴が背後から聞こえるたび、心臓に炎が灯る。
「俺が――守るんだ!!」
クロウは再び立ち上がり、両手に炎と氷を宿す。
炎が渦を巻き、氷が槍となる。
その力を同時に解き放つと、戦場の一角が爆ぜ、黒装束の敵がまとめて吹き飛んだ。
轟音、閃光、そして血飛沫。
クロウはもはや一人の少年ではなく、戦場を駆ける獣のようだった。
戦場全体が爆発したようだった。
大地は裂け、空は炎と雷で赤黒く染まり、煙と砂埃が視界を覆った。
炎属性の者たちは咆哮し、巨大な火球を放って爆発させ、一瞬で数十人を焼き尽くす。
水属性の者は応じるように水龍を召喚し、渦巻く奔流で敵をまとめて呑み込んだ。
土属性の戦士は大地を踏み鳴らし、鋭い岩柱を天に向かって突き上げ、敵の体を貫く。
空からは飛行能力を持つ者が急降下し、翼の一撃で暴風を巻き起こす。
雷属性の者たちは連続して稲妻を落とし、閃光が空を裂く。
音属性の咆哮は鼓膜を破り、多くの戦士が頭を抱えて倒れた。
濃い霧属性の中からは影が瞬間移動のように現れ、敵を刺し貫いては消えていく。
獣人たちは狼や獅子へと変身し、猛獣のように敵を切り裂いた。
その中心に――クロウがいた。
全身が気の光に包まれ、ただ一人で四方八方からの攻撃を受け止める。
氷属性の男が数十本の氷の槍を放つ。
クロウは大声で吠え、拳を振り抜くと熱気が爆発し、氷は瞬時に溶け散った。
風属性の敵が超高速で襲いかかる。だがクロウの反応はさらに速い。回し蹴りを放ち、敵を群衆の中へ吹き飛ばした。
さらに土属性の者が三人同時に岩の壁を立て、クロウを閉じ込めようとする。
だがクロウは跳び上がり、拳を大地へ叩きつけた。気の衝撃波が広がり、岩壁は粉々に砕け散った。
クロウの一撃一撃は、肉体の力だけではなく、不屈の意志そのものが込められていた。
彼の拳も蹴りも雷鳴のように轟き、敵の包囲を切り裂く。
汗と血が顔を伝って流れても、その瞳は燃え続ける。
無数の敵と怪物に囲まれながらも、クロウは立っていた――
消えることのない炎として。
激しい混戦の中、疾走していたクロウは突然、右側からの強烈な拳をまともに顔面に受けた。
「ドゴォッ!!!」




