012
私のブックマーク
「やめて…お願いだから…やめてくれ…!」
だが、大男は止まらなかった。
その目には冷酷な嘲笑しかない。
「ハハハッ! 所詮ゴミだ…お前ら全員!」
怒号とともに、棒はさらに深く頭を叩き潰す。
その時――
「や…やめろおおおおおおッ!!!」
クロウの絶叫が響き渡った。
折れた脚を引きずり、血の跡を残しながら必死に這い寄る。
震える手で地面を掴み、泥と血にまみれながら前へ進む。
涙と怒りに震えた声が喉を裂いた。
「やめろォォォ!!! リクを殺すなッ!!!
リク…俺を置いていくな…お願いだぁぁぁ!!!」
その瞳に映るのは――血に染まり、崩れ落ちる仲間の姿。
クロウの心臓は燃え盛る炎のように軋み、絶望と怒りが混ざり合って爆ぜようとしていた。
男はなおも棍棒を振り下ろし続けた。
――ドスッ! ドスッ! ドスッ!
リクの身体は血に染まり、目の光が徐々に薄れていく。
その一撃ごとに、小さな仲間たちの希望までもが砕かれていくようだった。
クロウは折れた足で立ち上がれず、地面に這いつくばりながら喉を裂くように叫んだ。
「やめろッ!! やめろって言ってるだろォ!!!」
しかし男は耳を貸さず、冷酷に棍棒を振り下ろし続ける。周りの子供たちは恐怖に凍りつき、ただ震えながら見ていることしかできなかった。
血に濡れた唇をわずかに動かし、リクがかすれた声を漏らす。
「……クロウ……た、助けて……」
その言葉は短く、弱々しかった。だがクロウの胸を深々と突き刺す。
瞬間、数え切れない記憶が頭の中を駆け巡った――。
二人で飢えをしのいだ日々。固いパンを分け合った夜。凍えるような寒さの中、一枚のぼろ布に包まって眠った時間。
そして、無邪気に夢を語り合ったあの瞬間。
「いつか家族みたいに、笑って暮らせる日が来るさ」――そう言って笑ったリクの顔。
クロウの目から涙があふれた。
声にならない慟哭とともに、心の奥底で燃える炎が爆発する。
「リクゥゥゥゥゥ!!!!」
血と涙にまみれながら、クロウの魂は叫んだ。
恐怖も、痛みも、もう残ってはいない。
ただ――友を守りたいという想いと、決して消えぬ怒りだけが、胸の中で燃え上がっていた。
「うおおおおおっ!!」
黒クロは咆哮した。瞳は紅に燃え、全身から炎が噴き上がる。
超高速で巨漢へと突進し、そのまま炎を纏った体当たりを叩き込む。
轟音と共に巨体は壁ごと吹き飛び、石造りの建物が粉々に砕け散った。
だが、奴の肉体は鋼鉄のように強化されていた。
ほとんど傷ついていないその男は、逆にクロの頭を鷲掴みにし、力任せに投げ飛ばす。
地面を転がったクロの顔は血に染まり、視界は揺らぐ。
それでも、彼は足を踏みしめて立ち上がり、消えることのない闘志をその瞳に宿していた。
「ぶっ潰れろォ!!」
クロは咆哮と共に、雷を纏った巨大な槍を生み出した。
稲光が空気を裂き、真っ直ぐ巨漢の腹部を貫く。
分厚い脂肪と鋼鉄の肉体を貫かれた男は、絶叫を上げ、怒り狂ったように口を開いた。
「ぐあああああっ!!!」
次の瞬間、耳を裂く轟音――超振動の衝撃波がクロの全身に叩きつけられる。
筋肉が痙攣し、鼓膜が破れそうな痛みに襲われる。
血が口から溢れる。だが、クロは一歩も退かない。
「まだだァッ!!」
拳に炎を纏わせ、渾身の一撃を叩き込む。
「ドガァッ!」
巨漢も反撃する。音を纏った拳と炎の拳が衝突し、爆発のような衝撃が何度も何度も響く。
互いの顔は殴り合いで原形を失い、血と炎と衝撃音が夜を切り裂く。
それでもクロは止まらない。仲間を守るため、何度でも立ち上がり、何度でも殴り続ける。
「うおおおおおおっ!!!」
最後の炎拳が炸裂し、巨漢の顔面を粉砕する。
白目を剥いた男は崩れ落ち、地に沈んだ。
クロは血に濡れたまま立ち尽くし、荒い息を吐く。
私のブックマーク




