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今日は、クロにとって新しい学校「ハタミット高校」の初日だった。
なぜか、今まで父親は一度もクロを学校に通わせたことがない。
だから、これがクロにとって人生で初めての学校生活だった。
今日は入学式。
とても大きくて、きれいで、にぎやかだ。
カラフルな旗や音楽、そしてたくさんの新しい顔。
クロはまわりを見渡して驚いた。
それもそのはず――彼は初めて**獣人**を見たのだ。
半分人間、半分獣。しっぽや耳、光る目を持つ生徒たちが歩いている。
「すごい……まるで夢みたいだ」クロは小さくつぶやいた。
その隣には、黒髪の短い少年が立っていた。優しそうで落ち着いた雰囲気だ。
「この学校、すごく大きいね」とクロが言うと、
少年は笑って答えた。
「うん。でもすぐ慣れるよ。入学試験のときに見たでしょ?」
クロは首をかしげた。
「入学試験? あ……もしかして君、試験を受けたの?」
「もちろん!」少年は笑った。「まさか、君は受けなかったの?」
クロは恥ずかしそうにうなずいた。
「うん……受けてないんだ」
少年の目がまんまるになる。
「えっ!? じゃあどうやって入ったの?」
「たぶん……運がよかったのかも」クロは苦笑いした。
少年は大笑いした。
「すごいな君! もしかして強すぎて試験いらなかったんじゃない?」
クロは肩をすくめて、少し照れた笑みを浮かべた。
入学式のあと、クロは自分のクラスが1A2だと知らされた。
ハタミット高校には、4つのクラスがある。
一番強いのが1A1、次が1A2、そのあと1A3、そして1A4。
上の学年に進むと、1A1 → 2A1 のように昇級していくのだ。
「ふーん、なんで自分は1A2なんだろう? 奨学金をもらったはずなのに……」
クロは少し首をかしげたが、気にしなかった。
教室に入ると、きれいな女子や強そうな男子がたくさんいた。
クロは何枚か写真を撮り、クラスメイトと話をした。
その瞬間、初めて「自分はここにいていいんだ」と感じた。
放課後、クロは学校の図書館で不思議な魔法の本を受け取った。
司書の先生は言った。
「1A1に上がりたいなら、この本を学びなさい。
この本を極めた者だけが、頂点に立てるのです。」
クロは青く光る表紙をじっと見つめ、
小さくつぶやいた。
「これが……最初の一歩か。」
そしてその夜、月明かりの下で、
クロはそっと魔法の本を開いた。
――新しい物語が、ここから始まる。




