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両者はそれぞれの扉から静かに姿を現した。
互いの視線が交わる――まるで昔から知り合いだったかのように、空気が一瞬にして張り詰めた。
観客席は静まり返り、誰もが息を呑む。
「試合開始!」――審判の声が響き渡る。
その瞬間、ウラシの足元から濃い煙が立ち上った。
煙の中から草が芽吹き、花が咲き、木々がぐんぐんと成長していく。
数秒のうちに、闘技場はまるで森のように変わり果てた。
柔らかな草原、絡みつくツタ、巨大な樹木――幻想的な光景に観客たちは息を呑む。
そして、ウサギやシカ、リスなどの草食動物たちが次々と現れ、走り回る。
あまりに美しい光景に、一瞬それが戦いであることを忘れてしまうほどだった。
しかし――レンツの瞳は冷たく光っていた。
彼は理解している。
「全部……幻覚だな。」
次の瞬間、煙の中からウラシが猛スピードで突っ込んできた!
だが、その姿は氷の風に触れた途端に溶け、霧のように消え去る。
「子供の遊びだ。」レンツが低く呟く。
足元の大地が激しく揺れた。
地面を突き破り、巨大な木と土でできた怪物の口が現れ、レンツを飲み込もうと襲いかかる!
彼は身を翻して避ける――が、背後から紅蓮の竜が咆哮を上げ、突進してきた。
レンツは即座に詠唱する。
「氷の盾。」
透明な氷の壁が彼の前に現れ、青い光を放つ。
竜はそのまま突っ込み、爆発するように霧散した。
闘技場は煙と熱気に包まれ、視界はほとんどゼロ。
その中で、一瞬だけ赤い光が走る。
レンツは薄く笑った。
「そこか……火球か。」
だが――その時、背後から重い拳が彼を殴り飛ばした!
ドゴォンッ!!
レンツの身体が地面に叩きつけられ、砂煙が天まで舞う。
地面の裂け目から土でできた巨人が姿を現し、
巨大な岩のハンマーを振り下ろす。
「ドォォォン!!!」
闘技場全体が揺れた。
観客席の人々でさえ、その一撃の威圧感に息を詰める。
ウラシは少し離れた場所で、冷たい笑みを浮かべた。
「終わりだな。」
しかしその時――冷たい風が吹き抜けた。
煙の中から、白髪で蒼い瞳の青年がゆっくりと歩み出る。
彼の吐く息は淡い氷の霧となり、足元の地面を凍らせていく。
レンツは静かに顔を上げ、薄く笑った。
その声は冷たく、しかし確かな力を秘めていた。
「――遊びは、ここまでだ。」
次の瞬間、闘技場の温度が一気に下がる。
彼の足元から放たれた氷の結晶が瞬く間に広がり、
すべてを包み込むように光り輝いた。
それは、反撃の始まりだった――。




