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クロウの身体から燃え上がる青い炎は、さらに激しさを増していた。まるで生き物のように揺らめき、周囲の空気を焼き尽くす。その異様な光景に、観客席からは驚嘆と歓声が入り混じった声が響き渡る。だが、長年の経験を積んできた相手は一歩も引かず、冷たい笑みを浮かべて仲間の分身たちに突撃を命じた。
ひとりの分身が正面から拳を突き出す。クロウは避けることなく、青炎を纏った拳を真っ向からぶつけた。
ドンッ!!
轟音とともに衝撃波が広がり、床石にひびが走る。分身は両腕を焦がされ、吹き飛ばされる。だが、クロウの背後から二体の分身が迫り、同時に蹴りを繰り出した。
クロウはわずかに身を沈め、二本の脚は空を切り、そのまま互いの腹部に直撃した。鈍い音が響く。クロウは即座に一体の足首を掴み、全身をひねって後方に潜んでいた分身へと投げ飛ばす。
バギィン!!
二体は激突し、石畳を砕きながら崩れ落ちた。
しかし安心する間もなく、背中に重い衝撃。別の分身が拳を叩き込んできたのだ。クロウは片手で受け止め、にやりと笑う。
その瞬間――
ガンッ!!
六体目の分身が現れ、クロウの顔面に強烈な一撃を打ち込んだ。彼の身体は宙を舞い、地面に叩きつけられて血が飛び散る。観客席から悲鳴があがる。
だが、分身たちは止まらない。獣の群れのように吠え声を上げ、同時に襲いかかる。
火の拳を放つ者、
大地を隆起させる者、
風の刃を操る者、
蔦で絡め取ろうとする者、
激流のように水を叩きつける者、
そして本体の拳が雷鳴のごとく振り下ろされる。
まさに六方から同時に殺到する必殺の連携攻撃。観客の息が止まる。
それでも、クロウは口の端を吊り上げ、静かに呟いた。
「……いいだろう。本気でやってやる。」
次の瞬間、青炎が爆ぜる。轟音と光が戦場を支配し、炎の渦が六人を呑み込んでゆく――。




