赤田家の日常 第四和
※本作は正真正銘のフィクションです。
出てくるお店や人物、動物、りょっちゃんはすべて架空のもので、どこにもありません。
インターネットにしこまれてたりしません。
どこかのなにかで「あれ?なんか似てるな〜」と感じたら、
きっとあなたの思い出の中か、もしくは前世かなんかの遠い日の記憶です。
赤田家の日常
「第四和:私は観測者、どんなに離れてたって見つけちゃうぞ☆」
赤田家のソラは広い。
♪~
沙奈の携帯に一通のメールが届く。
「あんた、風の噂で聞いたけどやばいもん作ってるらしいじゃん???
あんたまでそっちの道に進むの???覚悟あるん???
待ってるわよ、お前らのはるか上空の高みから!!!
当然、追いついて来れるよね???」
只今の時刻は19時半過ぎ。
入社してすぐに新商品の開発という重圧のかかる部署へと配属となり、憧れの青井と共に戦いの日々。
究極のメロンパンを目指し試行錯誤を重ねている。
やっとのことで沙奈の中に究極のメロンパンのイメージが固まってきた。
そのイメージを完全な状態で焼き上げるため、体に鞭打ちながら奮闘している。
そんな疲れた体を、どっと疲れさせるメールが届いた。
「誰から聞いたんだよ。てか、何様だよ……」
沙奈は思わず呟く。
♪~
「ワタシ、ハナサマ、いまあなたのあたまのなかに直接ぶっこんでんの」
気持ち悪い。怖い。語彙力を突然なくす沙奈ちゃん。
♪~
「見てるわよ~、ソラから見てるわよ~。頑張ってるね、☆毎☆晩☆」
絶句。言葉もなくす。
赤田家の中で何かが変わる?
♪~
「お疲れの沙奈ちゃん、疲れてるのにごめんね???あの世とこの世を結ぶ者、それシピーマン。てきな感じで今ハマってるんだけど、完全版あるらしいじゃん???買っといてくれる???」
♪~
「なんか華奈ちゃんから変なメールが来たの。母さんよくわからないから奈々ちゃんに聞いたの。そしたら奈々ちゃんが突然、泣き出したの。
沙奈ちゃんは、『シャキシャキレタス☆☆☆』ってわかる?」
なんなんだ、どうなってるんだ、沙奈は混乱する。
誰でもいい、助けて欲しい、説明して欲しい。
バスに乗り、きちんとマナーモードにする沙奈。
地獄の鐘の音を代わりにバイブが伝える。
「U丼って結局、青井くんが送別会のファミレスのサラダバーでてきとうに盛っただけでしょ???何、大層にもったいぶってんの???」
「華奈姉、これなに?普通に怖いんだけど」
もう思考はまともに働かない。感情をそのままぶつける。
「こう、なんていうの普通の人って、ふわふわしてて可愛いね、って言われないじゃない???だから沙奈ちゃんやママで実験???」
訳が分からない。
華奈との会話は昔から難しかった。
「ちゃんと分かるように説明してよ」
沙奈の手は止まらない。怖くて震えているのだ。
「もう、沙奈ちゃんも奈々ちゃんもほんと、もう……分かるでしょ???インチャ―リョッチ(インターネットでキャッチする量子とかそんな感じのなにか)からなんでも観測できるのよ。あなたたちにはね、わたしのりょっちゃんのかたわれを付けてるから、いつでもテレポして観測できるの」
インチャ―リョッチ?りょっちゃん?なんだそれ、である。
ここで解説しよう!
華奈ちゃんはまず勉強が大好きなのだ、それでいて好奇心モンスターだったのだ。
文字を読めばなんとなく理解し、自分に取り込む。
呼び方も勝手にアレンジし勝手に理解を深めていく。
そこで生まれる知識のない者との溝。
相手も自分と同じ理解度だと思い、話を続けてしまうのだ。
「華奈姉、まじで何言ってんのかわかんねえ」
「わたしも奈々ちゃんが何言ってるのか、全くわからないわよ」
「もつれ、もつれ言ってっから、足がもつれるんか?って聞いただけだろ。疲れてんなら、たまには休めよ!」
と、華奈と奈々では会話すら成立しないのだ。
でも華奈は奈々のことも大好き。可愛い奈々を愛でる、本人に悪意など全くないのだ。
しかし会話など続かないのだ。
奈々の辞書の中では「量子」などという文字は観測できないのだ。
「もつれ?」服の糸でもなんか出てたん?という感じなのだ。
再び地獄の門の小刻みノック。
「沙奈……、意味わからんメール来てる?もうわたし、しんどいんだけど、助けてくれない?」
奈々の悲痛なメールだった。
「研究が行き詰まってて、荒れてるのかな?正直、しんどいよね」
奈々に返信のメールを打つ。
が、寸前のところで送信ボタンを押さずに留まる。
「帰って寝たいなあ……」
心の底からの気持ちだった。
「えらいねえ、沙奈ちゃんはえらい!!!よく止めた!!!そろそろ起きなさい!!!」
よくわからない。本当によくわからない。ありきたりな夢落ちとでも言うのか。
突如バスにしては激しい揺れに襲われる。
「沙奈ちゃん、起きないと。ここで寝てちゃ駄目だよ、ホラ!」
「うにゃ?師匠……、あへ?」
開発部の自分の席である。
疲れていたのか、机に伏せて寝ていたようだ。
まだ寝ぼけているのか、ふわふわしているものの、なぜか気になって着信を知らせるランプが点滅している携帯を手に取る。
着信は2件のメール。
母からの「シャキシャキレタスってわかる?」と
一番上の姉からの「あんた、風の噂で聞いたけどやばいもん作ってるらしいじゃん???」だった。
「量子って確か、過去改変?できるんだっけ?」
沙奈は呟いた。
一番上の姉の影響か、ちょっとだけ変な風に知識がねじ込まれている。
難しいことはわからないし、とりあえずは、おそらく誰かからの影響でハマったと思われるマ◯キ◯の完全版は買って帰ってあげるか、と寄り道を決める。
♪~
「完全版買って帰ってくれるなら、華奈様だけに花編とスピンオフもお願いね☆☆☆」
どこかで何かをキャッチしているのか、それとも心でも読めるのか、やはりどうにも理解できない。
「あ、領収書ください」
しっかりものの沙奈である。
赤田家もたまには摩訶不思議なのだ。
第四和~完~
難しい話はよそでやってくれ、そうキレているのは「あかたさな」。赤田家の作者である。
こっちは軽い気持ちで軽く緩くゆったりまったりほっこりまるもっこりでやってんだ。
電波強いなあ、味濃いなあ、なんか賢く見られたいなあ、そんなのいらないんだよ!!!
今回は危険球にもほどがある!!