第9話 膝枕。
「アレクシス。髪を濡らしたままだと風邪をひくから駄目よって、いつも言ってるでしょう?」
「うん。」
「もう冷え切ってるわよ?大丈夫?」
「うん。」
殿下がソフィーア様に膝枕で髪を拭いてもらっているのを、モニカと眺める。
平和だよね。通常運転。
「目の下に隈があるわね。忙しかったの?」
「うん。」
寝返りを打って、ソフィーア様に顔を埋めて甘えている。猫か?
「どうしてエーミールが緊急事態だったわけ?」
「それは…君が誰か違う男と一緒にいるのかと思って…。」
「まあ。あなたでもあるまいし。」
「いや。その言い方はどうなの?」
「私は貞操という概念を持ち合わせておりますから。あなたと違って。」
「だから…。ごめん。」
「あなたがイザベラ様を選ぶというなら、それはそれで仕方ないかなあ、って。」
「ないから。ごめんて。そんなつもりはこれっぽっちもないから。」
いつものケンカほど、迫力が無いな。かなり弱ってるし、この人。借りてきた猫、みたい。
「じゃあおわびに、エーミールを飼ってもいい?」
「それは嫌。」
「え?」
「だって、こいつオスだから。」
「まあ。」
なあ、モニカ。こんなの見てても仕方ないから、お茶にしない?
言葉遊びの短いお話でした。