第5話 魔法使い?
「目が血走ってますぜ。眠れてないんですか?」
ここ数日、夜間徘徊を続けている殿下は、よく眠れていないようで、目が血走り、目の下の隈が酷い。今日も決裁書類に溺れている。
「さっさと謝ったらいいんじゃないんですかい?別に公爵家のイザベラ様が本気で好きってわけじゃないんでしょう?」
「・・・・・」
「陛下も王妃も呆れていらっしゃいましたぜ?」
「・・・・・」
「それともなんですか?婚約破棄とかお考えで?」
「・・・なあ、フランツ?警備はどうなってるんだ?」
「はああああ。再三、殿下がそう言うものだから、今、離れの警備兵は3メートルに一人です。経費の無駄遣いですよねえ。殿下の分から出していますんでね。」
「・・・・・」
「そんなにソフィーア様が心配なら、元の部屋に戻せばよろしいでしょ?まあ、あの方は曲者の一人や二人は気にしないと思いますがね。」
「・・・もしも、だぞ?もしもそれでも入り込むとしたら?」
「無理っすね。それこそ、幽霊とか魔法使いとか?いればですけど。ははっ。」
「・・・魔法使い?」
「それより、今日は例の公爵家令嬢が面会に来ますぜ。先日のお礼だそうです。
お仕事の邪魔はしたくないから、って執務室に来るらしいです。聞いてますか?殿下?」
「なあ…。魔法使いって、この時代でもいるのか?そいつは男か?」
「・・・は?」
その日訪れたイザベラ嬢は、擬態?
いつもなら真っ赤なドレスやら、目が覚めるようなド派手な露出度高めのドレスをお召の方だが、今日はソフィーア様を意識した?落ち着いた服装。だからあん、とか言って、言語崩壊している人が、きちんとした言葉を使っている。猫かぶり?かぶってるよね?2、3枚。
こりゃあ…公爵殿も本腰だね。
またしてもソフィーア様のもとにやってきた宰相を引き留め、
「こほん。私のアドバイスでよろしければ…。」
なんて、とんでもないことを言い出す始末。
「・・・・と、ここまで進みました。後は土砂に家を押しつぶされた住民の生活の再建プランですが、先に検討した通り安全な場所にインフラを整備して…。」
父上…。やけになっていますよね?
イザベラ嬢は目を白黒させている。おもろ。