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第2話 雨の夜。
「あら、濡れてしまったのね?大丈夫?拭いてあげるわね。入って。うふふっ。」
「・・・・・」
あの夜から俺は、侍従のフランツに嫌がられながらも、夜になると中庭を歩く。
今日は小雨が降っているので、カッパまで着て歩いている。というか、耳を澄ましている。ちなみにフランツはバルコニーの屋根の下であきれながら見ている。
おばあさまがお住まいだった離れは、俺の住んでいる王子用の屋敷の隣。子供の頃は良く、ソフィーアと一緒に遊びに行った。平屋のこじんまりとした屋敷。その間にはレンガで出来た塀。
(・・・ああ。雨でな、濡れたんだ。拭いて…。)
「ねえ、殿下?濡れますぜ?入って下さいよ。侍女に叱られますよ?」
「・・・・・」
「はい。タオル。」
「・・・拭いては、くれないのか?」
「は?」
「と、いうか、フランツ!警備はどうなってるんだ?ちゃんと増やしたのか?」
「ええ。猫の子一匹、入れませんぜ。」
「・・・・・」