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第1話 始まりの夜。
「・・・あら、今夜も来てくれたのね。待ってたわ。」
「・・・・・」
「あなたが来てくれないと、寂しくって…。お部屋に入りましょう?ね?」
「・・・・・」
そうして、ゆっくりベランダの窓が…閉まる音。
(え?ええええええ???)
寝付かれずに、ふらりと中庭に出た俺の耳に入ってきたのは…。ケンカして隣の離れにさっさと引っ越してしまった俺の婚約者、ソフィーアの猫なで声。俺だってあんな声聞かせてもらったことはないぞ??
え?ええええええ???
「・・・殿下、こんな夜中に何やってんすか?部屋に戻って下さいよ。」
背後から急に声を掛けられて、口から心臓が飛び出そうになる。
「フランツ、今すぐ警護を増やせ。」
「げっ?何かありましたか?何の気配もありませんぜ?」
「いいから。すぐにだ。離れを重点的にな。」
「・・・はあ…。」