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地獄の黙示録

地獄の黙示録


 大蔵省は徐々に不動産が下って行く事を期待していたと思う。し

かし、現実は不動産売買は全く成立せず、足腰の弱い企業から順に倒産して行くだけだった。手持ち不動産は同じ価格で債権者に受け継がれていくだけだった。

無声映画で見る雨降りの画面、鉄砲の弾の雨の中を兵士達は進んで行く。倒れた兵士の持っていた日の丸の旗を後ろの兵士が拾い上げ、それを高く掲げて進んで行く。死の行進だった。こんな行進がいつまでも続くはずが無い。兵士達はそれを信じて進んで行く。

地獄の黙示録に使われたワーグナーの曲が良く似合う。バブル崩壊の調べはこんな感じであった。

 私は金策にのた打ち回っていた。そんな時に未だ景気の良い行動を採っていた建設会社のA社長が飛び込んで来た。

「不動産会社からの注文で、そこの自社ビルを建てて完成寸前だったが、今まで4回に分けて受け取っていた手形が全て不渡りになった」

 私達の間には一つのやり取りがあった。彼の紹介で買った不動産が良い値で売れた時、利益から1500万円を渡すとの話だった。バブルの頃の建設会社の荒っぽいやり取りであった。彼はそれを当てにしていた。しかし、不動産業界は止まったままで売れる目途もない。まして暴落で利益の出るどころか、既に大赤字が見込まれていた。

<1500万円の話は既に消えている。バブルが弾けて不動産は大暴落している。不動産業界は潰れるのを待っている状態だ>と説明して断ったが、代わりに彼は手形を希望した。

「分かったけれど、絶対に使わないから貸してくれ」と彼は頼み込んだ。私の脳裏に彼がかつて受けた4500万円の不渡りの話が浮かんだ。私は手形用紙を持っていた。私は1度も使った事の無い手形に1500万円を書き込んで彼に渡した。最悪の事態が起こっても、この金額なら自分で処理できると判断したからっであった。

彼は債権者に見せるだけ、債権者を納得させるだけだと約束したが、3ヵ月後にそれは嘘であった事が判った。この事がきっかけで私は彼の会社の運命に迄付き合う事になった。結果的にこの時の傷が大きくなり自己破産する事になったが、多くの人や、会社が迷惑を掛けたり掛けられたりして行った。迷惑を掛けられた事には腹は立たなかったが、私が掛けた人にはすまないと思っている。

 私はバブルを望んでいなかった。バブルは政府の政策だった。それが政府の思惑を超え、止め方を失敗したのだ。大蔵省は迷惑を掛けた人達にもっとすまないと思うべきだ。1年の、のた打ち回りの内容を要約するのは難しい。又、聞き苦しいし、見苦しい。

<なあ~んや>にならない。



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