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砂上の楼閣

砂上の楼閣

 

予想はしていたが現実の動きは知らなかった。私は4月から年末まで不動産の仕事はしていないし、会社にも殆んど出なかった。中国に行ったり、編集の仕事にかかりきりだった。

1991年の年明けから社員達に「仕事に掛かれ」と号令を出したが、誰もが何をして良いか判らない様子だった。私は事務で入社させていた可愛い20歳の女性を営業に回した。そして皆がいる前で具体的に営業のやり方を指示した。古い営業の3人は知っていても、それをしようとしなかった。

可愛い彼女は私の教えた通りにした。先ず我が社の持ち物件と売買の依頼物件の不動産案内書を、名簿やその外の方法で気が向いた業者に電話で声をかけて、ファックスする様にと指示をした。彼女は指示通りに素直にした。

 彼女は声も可愛かった。それが影響したかは判らなかったが反応は良かった。相手からは<これを売って欲しい>と不動産資料がどっとファックスで来た。彼女は送られて来た資料を同様に思いつく所にファックスをした。1週間で彼女宛の電話とファックスは鳴り止まない状態になった。他の営業の3人は彼女のする事をポカーンとして見ているだけだった。

 このまま続けると彼女は1ヶ月で1億円は儲けられると私は思ったが、1ヶ月後に起こった事は、彼女が会社を辞める事だった。

困っていたのは我が社だけでは無かったのだ。あらゆる不動産業者が同じ状態だった。そこに彼女が新鮮な初心者の動きをしたので、ひょっとしたら救世主かも知れないと皆が飛び付いたのだろう。彼女だけがその虚構を感じ取り、そしてその虚構から逃れたのだ。

<なあ~んや、砂上の楼閣だったんや>



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