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 ヒロインとおばあちゃんのシーンが有った。元々私の母を想定してそのシーンをシナリオに書いた。私は当時89歳の母を使うと言ったが、F氏は「それは無理です。プロが作る映画でも若い俳優にしわを描いて使うのです」と言った。私はこれだけは従えない、母を使うと言って、姉に付き添いで姫路沖の島まで連れて来て貰った。明治生まれの母は台本を読めない。その場で説明をして、その場でセリフを読んで伝えた。一回のリハーサルをしただけでOKが出た。何と、母はアドリブを入れて演じたのだ。後でF氏は「失礼な事を言った」と私に謝った。


 この母を家島のロケ地に連れて来るのに問題が起こった。小島に行く為に小船に乗り換える必要があった。何と、乗ってきた船から中継の小船に足場板を渡し、又別の船に足場板を渡しただけの橋を渡らなければならないのだ。足場板は1人ずつしか乗ることが出来ない。手を繋ぐ事も背負う事も出来ない。89歳の母は50歳の頃から足が悪い。ここまで杖を突いて同行していたのだ。足場板は揺れている。一体どうすれば良いのだ?!皆が頭を抱えた。

 母は「心配ないよ、1人で渡るから」と言って、皆が心配そうに見守る中、杖も使わず、無事渡る事が出来た。それは奇跡と呼んでも良い出来事だった。息子が作る映画に立ち会う事が出来て、母は50歳まで若返っている様だった。

 この後95歳で死ぬまで「あの時は楽しかったな」と言ってくれた。

「なあ~んや、アルプスの少女ハイジに出て来るクララだったんや」



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