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子役
子役
私達は残りの国内ロケの為、私の母と姉と、子役とその母に主役の2人と少しの取り巻きを加えて、姫路沖の島、家島に行った。
ヒロインの幼女時代の回想シーンで海に沈む夕日に向かって「おとうちゃ~ん」と叫んで泣くと言うだけのシーンが有った。漁に出た父が返って来ないという設定だった。
私は現地の子に頼もうと言ったのだが、F氏は「それは無理です。やはり俳優に成る為の特訓を受けた子役でないと上手く出来ない」と言う事だったので、F氏に従って、子役をその母と共に大阪から連れて行った。
しかし、撮影本番その子はプレッシャーで何も出来ずに泣いた。夕日が沈むのに合わせなくてはならなかったのだ。早くから用意をしていても何の役にも立たない。夕日が少しずつ水平線に近付いて行く。撮影のチャンスは3分位の1回だけだ。夕日がどんどん水平線に近づいて行く。
突然、大自然の背景は寂しさを演出する。その時、彼女がプレッシャーで泣き始めた。「おとうちゃ~ん」は無かったけれど、泣くという動作は演技と同じだった。
ひとまず<なあ~んや>でした。




