スタッフとキャスト
スタッフとキャスト
スタッフの皆さんは特にご苦労様でした。毎日4時間睡眠で頑張って貰いました。スタッフは一般的に先にロケ地に行って準備をして、撮影が終わったら後片付けをして、勿論機材も運ばないといけない。
中国ロケは少し違っていた。食事は毎晩レセプションとなり、スタッフもそれに付き合わないと別食は無い。次から次に挨拶が有る。しかも全て通訳付きなので倍の時間が掛かる。レセプションが終わってから機材の整理をして、次の日の準備をして、その日の撮影が取り直しの有り無しの検討、翌日の進行の打ち合わせをして、風呂に入る。しかもホテルの移動の準備までしなくてはいけなかった。この作業を2ヶ月間1日も休まず行い、一旦日本に帰り、国内ロケの残りを片付け、機材や消耗品の入れ替え等をして、又中国ロケを1ヶ月行ったのである。
私は中国では1足先に次のロケ地に行って打ち合わせをしていたので、スタッフの皆さんの苦労を知らなかった。或る時スタッフとキャストが口論になったそうである。スタッフから見てキャストは遊んでいる様に見えたので、「少しは手伝ったらどうだ」となったようである。キャストの話は聞いていないので判らないが、F氏によると次のように言っていたそうである。
「まるでドキュメンタリーの様な映画で、日本人キャスト以外は全て本物が出て来て、演技なのか、いつも通りの行動なのか全く区別が付かない。私達がどんなプレッシャーの中で演じているか分かっていない。この中国の現実を理解して溶け込むのに必死なんだ」スタッフはそれ以上追及出来なかったとの事だった。
よく<演技者は犬に負ける>と言う話が出る。どんなにリアルに演技しても犬と一緒に映ると犬の方がリアルに見えてしまうのだ。ちなみに私もO社長もセリフ入りのシーンに出ている。勿論シナリオ通りだ。リハーサルも無く一発でOKを出している。
「なあ~んや、私は犬か」
中国人の出演者にとっては、現実社会では通訳を通じて必要な行動を行う。ロケの中で通訳の指示通りに行動するのと大差はなかったのである。




