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中国歌手孫静(スンチン)

中国歌手孫静スンチン


 中国ロケの1ヶ月ほど前、私とO社長はロケ地での打ち合わせに行った。南京市の1つ上海側に鎮江市がある。この鎮江市に行った時のことである。応対した中国側の担当者は3カ月ほど大阪に研修に来ていて、帰国して間が無かった人物である。私は大阪で江南慕情の歌詞とテープを彼に渡していた。それはレコーディング済のカラオケとSさんの歌のデモテープであった。彼は孫静スンチンを紹介した。私の作った歌詞を彼が中国語に訳し、彼女に歌ってもらったと言ってテープを見せた。私は早速聴きたいと言ったがラジカセは無い。私達は電気屋に行った。と言っても私には馬小屋に古道具が置いてあるとしか見えなかった。土壁で仕切った長屋の1角の小さな店であった。

置いてある物にはすべて土埃が覆っていた。こんな所にラジカセが有るのだろうか?しかし、その5分後に夢かと思えるほどの素晴らしい歌声が流れた。

私が作曲したその曲は、まるで中国人が作曲して古くから歌い継がれて来たと思えるほど中国風土に馴染んでいた。

同行したO社長もやり手である。O社長は翌日南京市と打ち合わせの折、歌手を南京市まで呼び出し、南京市長の前で、主題歌を歌う歌手と紹介して歌わせた。残念ながらラジカセも無かったのでアカペラであったが、孫静は持ち歌のように歌ってくれた。

夕食後ホテルのラウンジでカラオケを流し、マイクで歌ってもらった。ダンスをする客も現れた。そのままレコーディングしたい位だった。彼女は鎮江歌舞団の1員であるが、当時は国家公務員である。彼女がその日南京に泊まったのか、タクシーで帰ったのか判らなかったが、よくもそんな事が出来たものだ。


 私は大阪に帰って直ぐにシナリオを書き直した。孫静とSさんは中国人夫婦の役柄でヒロインと一緒にヒーローを探すと言う設定にした。

 さて、彼女の撮影は無事終了するのであるが、皆が感激したほど彼女の歌は上手く収録できていなかった。レコード会社のプロデューサーと口論したが、ラウンジの音を拾うしか無く、綺麗に収録するにはスタジオに呼ばないと無理との事だった。

 

 その後6~7年経って久しぶりに訪中した。彼女が民歌部門のコンテストで中国1番になり、北京テレビで週2本のレギュラー番組を持つまでになった事を知りました。南京に呼び出した時、通訳が「良くこんな有名な人を呼び寄せることが出来ますね」とびっくりしていた。

O社長が「日本に来る気が有るか」と聞くと、彼女は「1週間位なら」と答えた。日本でレコーディングの準備をして置いて、1週間の間にレコーディングをする事が出来ると思った。残念ながら私自身、現在まで浮揚のきっかけが掴めていない。その後孫静はどうなっているだろうか、彼女の為に役に立っていただろうか等と思いを巡らす。

「なあ~んや、又回顧しているのか」

「いや違う。私は絶対復活する。やり残した事をやるんや」



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