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 未だ父が元気だった頃、我が家では兎を飼っていた。後日、家族の一員になった猫のチョマと違い、兎は名も無く、ペットではなかった。小さなウサギ小屋の中で一匹だけ飼われており、偶に外で運動をさせることもなかった。父が雨で仕事が休みの時だけ家に入れて運動させたが、逃げるといけないので、父のいない日にそれは出来なかった。小学2~3年の頃だったか、私は菜っ葉を与えながら、可愛がっているつもりだった。私は兎を抱っこして可愛がる事もしなかった。それでも菜っ葉を与えながら、仲の良い友達同士と思っていた。

 ある朝起きたら兎は死んでいた。

<いたちにやられた>と父が母に話していた。私は泣いた。

「泣いていたら又学校遅刻するよ、早く行きなさい」と、母に無理矢理追い出された。


 学校から帰って来ると、一番先にウサギ小屋を覗いた。兎は居なくて、小屋の中はきれいに掃除されていた。その後どんな会話をしたのかよく覚えていない。何時もの様に「遊びに行っといで」と追い出されたと思う。

 その日の夕食は豪勢な鍋料理だった。何時も夜遅く帰って来る父もその日だけは早く帰り、久々の親子団欒のひと時だった。でも未だ私はしつこく兎の話を話題にした。とうとう母が「今食べているのは兎の肉だよ」と言った。私は兎の話をするのを止めた。と言うより口が動かなくなったのだ。


 兎は初めから食べられる運命にあったのだ。いたちが少し時期を早めただけなのだ。その時に私がそう思ったか覚えていない。<なあ~んや>は今でも半分喉元にひっかかる。


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