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 父親が亡くなったのは私が小学5年の時だったと思うのだが、よく覚えていない。父が病床に就くまでは、朝早く出かけ、夜遅く帰るので殆んど会話をしていなかった。私は母が45歳の時の子だった。私は「おばぁちゃん子」と言うあだ名が付いていた。母は足が悪く、父が亡くなってからは、2人は姉の仕送りで生活をした。但し私はその事を知らなかった。仔猫が家族の欠員を補充した。チョマと名付けた仔猫は私達と一緒に遊んでくれた。


 チョマは直ぐに大きくなった。私達の家は山の傍らに在り、急斜面の竹薮から50米位の所に在った。大きくなったチョマは竹薮を駆け上がり、駆け下りる事を繰り返すのが日課であった。チョマを呼び戻す時は家の前に七輪を出してスルメを焼いた。チョマは必ず飛ぶような勢いで帰って来て一緒にスルメを食べた。

 山と逆方向に30米位細い路地を通れば<おんも>と呼んでいた表通りに出られる。私が学校から帰って来ると、必ず屋根伝いに<おんも>迄来て、屋根の上から迎えてくれた。そして屋根伝いに戻り、家に一緒に入った。今頃気が付いたが、<おんも>は名称ではなくて、単に<表通り>の赤ちゃん言葉だったのだ。


 チョマとの別れは劇的だった。突然、書置きも無く姿を消した。私はチョマの帰って来るのを待ち望んだ。2~3ヶ月経った冬のある日、チョマはフラフラになって帰って来た。少しだけ食事をした後、炬燵の中に入ったきり出ようとしなかった。そして3日目に又、消えてしまった。今度は帰ってこなかった。母と「チョマに何があったんだろう」と話し合ったが、全く判らなかった。<猫は人間に死に目を見せない>とよく聞くが<なあ~んや>の気分にはなれなかった。


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