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OSAKA EL.DORADO  作者: 佐野和哉
OSAKA EL.DORADO
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64.

 一方でクリス大佐の機体は再度、上空へと向かっていった。先ほどと同じくらいの高さまで浮かび上がって、そこで四機が合わさってロボットの形に戻る。

「さて。マノ、最後は私も行こうじゃないか」

 T2は空中で地面を向いて平行になり、手足をピッタリと揃えてマノの上に重なるような位置取りをみせた。気を付け、の姿勢のままコックピットのクリス大佐は叫ぶ。

 Down To Earth!!

 背中や脚のジェットポッドを全開にして、空気との摩擦と機体の持つエネルギーの熱を帯びて、T2が真っ赤に光って、仰臥するマノ目掛けて落っこちて来て。

 埋立地の地盤を砕くほどの轟音と共にそのまま地面へと激突した。勿論、マノはT2の下敷きだ。舞い上がった砂塵が風に流され、地面に突っ伏したT2と、ぺしゃんこになったマノが……見えるかと思った。

 が、そこにはブリッヂで首と足を使って自身とT2の体重を支えながら、逆に跳ね返さんとするマノの姿があった。

 夕陽を背負って地面にアーチを描いたマノと、その上に圧し掛かるT2の手が四つにがっぷり組み、互いに譲らず押し合っている。

 T2がロボットとは思えぬ柔軟さを発揮し、マノのお腹の上にまたがるように飛び乗って、またひとつ、ふたつと体重をかけてゆく。苦悶の声を上げるマノだが、T2がみっつめに跳ねた瞬間にブリッヂを解き下から足を突き出した。T2はマノの足をテコにして後方へ大きく投げ飛ばされ、地面をすり減らすように不時着した。


 魔王の去ったオーサカ湾が、静かで豊かな潮騒を響かせる。

 その低く轟々とした響きの中で、二つの巨大なシルエットは戦い続けている。夕陽を背負って。舞い踊る砂ぼこりの中で。絢爛たる巨大な廃墟のド真ん中で。

 

「それにしても……こんな理由で遊べなくなるなんて」

 ミロクちゃんが戦況を見つめながら、ぽつりと漏らした。

「ゆうえんち……」

「マト。仕方ありまひん、でも……ごめんね」

(汽車ぽっぽに乗りたかったぢょ~)

 みんなも思い出したように溜息をつき、口々に残念がっていた。マトに至っては遊園地というものがどういうものかさえ理解する間もなく、取り返しのつかない事態になってしまったのだ。

「そうね、雨風が強いってんならともかく遊園地がロボットになっちゃうなんて」

「え、遊園地って風が強いと遊べないの?」

 あぶくちゃんが何気なくこぼした独り言を聞いて、ミロクちゃんは素っ頓狂な声を出した。

「そりゃそーよ。ジェットコースターもメリーゴーランドも電気で機械をぐるぐる廻すのよ、危ないじゃない!」

「そっかあ、確かにそうね」

「それだ!!」

「な、なによサンガネ!」

「あぶくちゃん、それだよ。風だ!!」

「え、だって、風って……」

「マノだよ。マノなら風を起こすぐらい簡単だろ!? 火でも水でも出すんだから」

「そっかあ、そうね! 風を起こしてもらえばいいのよ!」

「な、な、な、なんじゃ! マノは一体何をするのじゃ」

「ウノさん、お手々の火、出してた」

(しょーだぢょ、ウノの弟なら、そのぐらい出来るはずだぢょ!)

「マノーーッ!」

 早速、あぶくちゃんが窓のそばまで駆けて行って割れたガラスから顔を突き出して叫んだ。

「ダメだよ、流石にここからじゃ聞こえない……」

「端末も壊れちゃったし、屋上に出て叫ぼうか」

「危ないわよ! けど」

「どうしよう……」

 その時。マトがサメちゃんの元を離れて、弟のニャミに駆け寄った。

「ニャミ。お話して」

「ニャミ……ああ!」

「そうか、ニャミのテレパシーなら聞こえるかも!」

「ニャミ、マノさんにお話してみてひん」

(おやすい御用だぢょ~~!)

 ニャミがゆりかごの中でウニャ~っと笑って、ぷるぷるのほっぺや耳たぶをたぷたぷさせながら目を閉じた。


(マノ、マノ!! ボキの話を聞くんだぢょ~~!)

 今まさにT2と取っ組み合い、機械仕掛けの剛腕を掻い潜っていたマノはニャミの呼びかけにビックリして、左胸に手痛い一発を受けてしまった。が、その勢いを利用して後方回転し、T2と距離をとって言葉を返した。

(ニャミ! どうしたんだ!!)

(みんなで話し合ったんだぢょ、風を使うんだぢよ~!)

(風!?)

(遊園地の機械は風に弱いって、あぶくちゃんが言ってたぢょ~!)

「そうか、風か!!」

(嵐を起こしぇ~~!)


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