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OSAKA EL.DORADO  作者: 佐野和哉
OSAKA EL.DORADO

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4.

 まあ、他の地方ではパーソナルセンターがその地域の労働者の正規雇用を奪うと、自分たちが体よく仕事を奪われたというのにすっかり項垂れてパーソナルセンターに面接を受けに来るけど……コッチじゃ項垂れて面接どころか血迷ってカチコミに来るからね。それも大勢で。


 だから独立オーサカ一心会が先手を打って、真面目で大人しい事務方から切り捨てて行ったんだ。勿論、温情(オーサカ特有のぬくもりとやさしさ)にかこつけてパーソナルセンターを通して再雇用させたうえで安く使い直すんだけどね。

 そうやってパーソナルセンターのやることに役所として反発しないようにしてから、粛々と勝利に向かっての「改革」「解放」を進めて行ったんだ。


 ともあれ、近隣の荒くればかり集めたもんだから寄せ場じゃ揉め事や喧嘩は日常茶飯事。それらを取り仕切るには必然的に人数と暴力にモノを言わせるヤクザもんの出番だ。言うこと聞かないヤンチャな作業員さんは宿無しのろくでなしだったのが指無しの宿無しになったり、名無しの溺死体になったりもした。


 やがて人足の供給だけに飽き足らず、ヤクザもんも多角経営を始める。その中の一つが有線放送に取って代わって普及したインターネット回線を通じた音楽番組で、これは戦後も生き残った回戦を見つけ出したオールドメディア愛好家の機械マニアたちが繋いだ周波数を「無償」で「拝借」して、それを店側に受信させることで受信料や回線の使用料、音楽を流す手数料などの名目で金銭を要求し、払わないとぬかすヤンチャな店主は店無しになったり指無しになったり名無しの溺死体になったり……。

 少なくとも、あることないこと吹聴されたり、店の前で嫌がらせを受けて商売が出来なくなって店を畳んだり、それで街を去ることになった人も居たっけな。


 そんなロクデナシどもを店に向かってまるで文化を食い荒らすイナゴみたいに放っているのが、他ならぬ独立オーサカ一心会さ。そしてその裏にはパーソナルセンターが居て、やはり財布と人材を握っている。


「つまり、独立オーサカ一心会とパーソナルセンター、両方を叩く必要があるってわけだ」

「そういうことだね」

 水タバコから伸びたホースをつまんで、ふーっと煙を吐き出したマノがボソリと

「気の長い話だな……マッドナゴヤに行く前に戦争が終わっちまうぞ」

 と、皮肉を言った。彼がオーサカにやって来たのは生き別れたお兄さん(ウノと言う人らしい)を探すためで、マノとは入れ違いにマッドナゴヤに向かってしまったようだった。


 マノはお兄さんを追いかけたかったけど、この街に居るあぶくちゃんなる可愛くて人気者のオールドスクールメイドカフェテリア経営者に惚れ込んでしまったために、僕たちの文化と暮らしを守るための徹底抗戦にも手を貸してくれることとなった。それはつまり、ボクたちの文化と暮らし、すなわち……。


「敵は強大で悪辣で、そのうえ手下どもは揃いも揃って怖いものナシのならず者と来てる。ボクたちの暮らしと文化を守れるのは君しかいないんだ、マノ」

「それはサンガネ、君の意見なのか?」

「?」

「君、だけ、か?」

「あ、ああ。そんなことはないよ。ニッポンバシオタロードの総意だ。そしてそれは、あぶくちゃんの」

「あぶくちゃんが、僕の力を必要としているんだな……!?」


 全く、この男は可愛い女の子には目が無いばかりか常々「人生女の子目当て」と公言しているだけのことはある。自分が惚れ込んだ女の子のためならば天地を揺らすし月でも星でも落とすだろう。そして、本当にあの独立オーサカ一心会をも滅ぼしてしまうかもしれない。それも、たった一人で。


「そ、その通りだよマノ! だから、お願いだよ。力を貸して欲しいんだ」

「まかせとけ。って、あぶくちゃんに言っておいて」

「自分で言えばいいじゃないか」

「そんなことをして、あぶくちゃんに乱暴者だと思われたらどうするんだ」

「本人の目の前であれだけメタクソに大暴れしておいて、よく言うよ」


「おーーい、サンガネー!」

「おっ、マノ。言ってる傍からお客さんだよ。あの声はあぶくちゃ……もういない」



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