ただ、ひとり。
眠い。
とても眠い。
だが、とても暖かい。
…僕は今どこにいる?
分からない。
どこかで僕のことを誰かが呼んでいる。
くるくるっと、風が吹いてきた。
…少し肌寒いかもしれない。
今は春だ。
でも心地よい。
あぁ、起きなければ、起きなければ。
いつまでも寝ている訳には行かない。
起きよう。そしていつもどうり朝ごはんを食べて、
身支度も済まし家を出よう。
目覚ましは鳴ったかな…
目を覚ますとそこは、いつもの見なれた自分の部屋だった。
だが何かがおかしい。
いつもの、テレビの中のニュースキャスターが喋る声。
また、外から聞こえる、静寂をかき消すための雑音。
そして下から香る、暖かい味噌汁の匂い。
それらすべてが、ない。
五感を駆使してもなお、それがない。
ない?なぜ?何故だ。
そんなはずがない。
いつもなら母さんが、僕を起こすために僕の部屋のテレビでニュースを入れる。
いつもなら外では、近くの木で小鳥がぴよぴよと歌う音や、車が走る音が長々と垂れ流されている。
僕の家は二階建てだ。そして、僕の部屋は二階の奥にある。
1階からはいつもなら、朝ごはんの善い匂い。特に特徴的なのは味噌汁の匂いだ。これだけは格別な匂いだ。今でも思い出せる。
…いつもなら。今までだったらと。
僕は今思い出している。
思い出しているということだけで分かるのは、今思い出していたことは習慣化していたということ。次に、今思い出していたことは、全て現実に起こっていないということ。
そういえば、目覚ましの音もなった気がしない。
ここはなにか別の空間ということか?
少し探索してみるのも良いかもしれない。
僕はぼーっと考えていただけの脳みそをできるだけを起こしベッドから出たあと、よろよろとした足取りで1回の台所へ向かった。
そこでは、物凄く奇妙なことが起こっていた。