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第十一話 師匠

まだ買い物にはいけなかったけど楽しく書けたので満足ですまる

……お互いに気まずい空間が流れている。どちらも一言も発することはないし、顔を赤くして歩いている。周囲から嫉妬の視線と同時に生暖かい視線も感じる。


……それでもその手はしっかりと強く握られているわけだが。


「もうすぐつきそうだな」


俺は沈黙に耐えられず無理やり会話をつなごうとする。


「ふぇ...?あ!はい!そうですね!こういうe-sportsショップにまともにいくのは初めてなので楽しみです!」


「あれ、この前の時に行かなかったの?」


そう聞いた途端一条の顔が少しだけ曇る。………しまったな。そりゃそうだろう。行かなかったんじゃなく、行っても中を見る時間がなかったのだろう。


 「この前は……見る時間がなかったですから……」


案の定そんな答えが返ってくる。自分の無神経さが嫌になる。


「……ごめん。一条の気持ちもわからずに無神経なことを言ってしまった」


「いや!全然大丈夫ですよ!さ、さっ!行きましょう!」


一条の元に戻った表情を見る限りあまり気にしてはいないようで少しは気に楽になる。そうして俺は手を引かれて歩みを速める。


―――その温かい手のぬくもりが、俺を救ってくれる。


 本当に彼女には助けられている。しっかりとお返しをしないとな。

 

歩いていくと次第に目の前にとてつもなく大きな建物が見えてくる。ショッピングモールの中なのに二階建てでしっかりと外装も作られている特大の建物。それが都内最大級のe-sportsショップ、[mayrey]である。


元々その圧倒的な実力でMMC決勝進出を果たした日本トップレベルのプレイヤーが引退と同時に彼をオーナーとして設立したショップだ。日本トップのトップのネームパワーもさることながらプロゲーマ―としての知識を使った本当に使いやすいデバイスの厳選、彼の伝手を利用して有名プロを招集、定期的にイベントを行うなどして一躍日本有数の人気店となった。


 「なんとかついたな………一時はどうなるかと思ったが……」


 「この前はここまで混んでいたわけではなかったのですが……やっぱり連休も終わりの方で数から皆さん来たがるんですかね?」


「来るまでが一番大変だったな……」


思わずその場にしゃがみこんでしまいそうな勢いでどっと疲れが襲ってくる。


 一条も同じなのだろう。これまで離さないようにしっかりとつかまれていた手がそっとほどける。


「あっ………」


一条がそんな声を出す。………やめてくれよ………そんな寂しそうな声を出されたら勘違いしてしまいそうだ……


「いや、そのだな。さすがに店内だと同級生に合うかもしれないし、一条は有名人だから………」


「えっ?私って有名なんですか?」


「有名ってなにも、誰とも話さない、常に気丈な態度を崩さないそのクールな立ち振る舞いがまるで星のようだからって【星姫】ってネットでも学校でも呼ばれてるのは有名な話だろう?」


一条が知らないことはないと思ったが予想外だった。誰とも話さないにしても耳には入ってくるもんだと思っていたが……


「え?ほし……ひめ?なんですかそれ……?」


まったくの初耳だったようで一条は肩をわなわなと震わせながら羞恥に悶えている


「私がそんな恥ずかしい名前で呼ばれていたなんて……なんで誰も教えてくれないの……」


「教えるも何も浸透しすぎていたのも原因だと思うが……今知れてよかったな。うん」


俺は一条を宥めるように肩をポンポンと叩く。


「うぅ……明後日から私学校いけませんよ………」


「二つ名はあんまり気にしない方がいいぞ。気にすれば気にするだけ頭を抱える羽目になる。俺なんて【刻の魔術師】だぞ?」


「確かに………考えてみるとかなり恥ずかしいですね……」


「どちみち割り切らないとこの先やっていけないんだから今のうちに覚悟を決めておいた方がいいぞ」


「そ、そうですね………がんばります……」


店内に入る。店内は某家電量販店のような雰囲気で、かなりの盛り上がりを見せていた。どうやら今日イベントがあるらしい。……まぁ俺らには関係のない話だが。


「今日イベントがあるらしいな」


「そうみたいですね………どうやらプロの方がやってきて客と1v1をするとか」


「なるほど。それならこの盛り上がり方も納得だな。誰が来るとかわかるものなのか?」


「えっと、ちょっと待ってくださいね……」


一条はスマホをせっせと動かす。店のイベント情報を調べているようだ。


「あっわかりましたよ!どうやら[Arlaune]さんが来るみたいですよ!」


「は?」


――――――――まずい、非常にまずい。これは本当にダメだ。ろくなことが起きる気がしない。


「一条、そのイベントっていつからだ?」


 「え?七宮さん興味があるんですか?えっと……13時からみたいですね…」


 「なら大丈夫そうだな………なんとかその前に帰れそうだ」


 現在時刻は十一時。イベントの開始時間までに買い物を済ませて飯でも食べに行けばいい。


「えっ、もしかしてお知り合いなんですか?」


 「あぁ………昔ちょっとな……」




ぶっちゃけた話、ちょっとどころではない。そう、彼女は………


「あっでもさっき彼女がSNSでファンサービスするから二時間前くらいから現場入りするって言ってるみたいですよ!もうすぐ到着するとも言ってます………え?ちょ!待ってくださいよ!」


一条のその言葉が耳に入った途端俺はその場を後にした。だめだ。非常によくない。今彼女と遭遇するのはとてつもなく気まずいのだ。少なくとも今会いたくない。


必死に追いかけてくる一条の姿がどんどん遠くなっていく。もともと体力のない彼女のことだ。全力で走る俺に追いつくことは不可能だろう。


 ………一条には悪いことをしたな。後で何かお詫びしないと……


 そんなことを考えながら俺は全力でモール内を駆けていく。誰も来ないようなショッピングモールの端まで行けば会うことはないだろう。とりあえずそこまで………


ドンッ!


あまりにも焦っていたことに加えて全力で入っていたので他の客にぶつかってしまった。その衝撃で俺は倒れこむ。幸い軽くぶつかった程度でお互い怪我はないが、完全に俺の過失なのでしっかりと謝罪をしよう。


「すっ、すみません!俺の不注意で……」


「あらあら。大丈夫よ~。それより君は怪我してないかな~?」


そんなことを言いながらしゃがみこみ、俺に目を合わせてくる。


――――あぁ、終わった。


緑色の肩まで伸びた長い髪の毛、ふわふわとした口調、それでいてモデルのような長身美人。


――――そう、彼女は、


「えっ………?ナナくん?ほんもの………?」


どれだけコーチを頼んでも匙を投げられたジュニア時代、唯一俺を拾って鍛え上げてくれたコーチにして人生の師匠。七年前のあの事件以降もずっと俺を気にかけてくれていた存在。だからこそ今一番会いたくなかった、そんな人。


―――――日本人プレイヤー随一のサポーターとして名を馳せている現役トッププロ[Arlaune]こと、六星美沙の姿がそこにはあった。


ついに来ました新キャラ!

あらあら系長身美人お姉さんです


ここまで読んでくださってありがとうございました!面白いと思っていただけたら感想、評価、ブックマークをよろしくお願いします!

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