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第十三話 そうして世界は。

七翔くん視点に戻ります。

この話も対比を意識して書いてみました。

怜也から貰った衣装に身を包んで彼女のプレイがなるべく見やすい場所に移動す

る。


割り込みシステムは、その破格すぎる性能故に第三者がプレイヤーとしてプレイに干渉できるのは一分間と決まっていることに加えて割り込み参戦する際には10秒のスポーン待機時間が存在しており、その間ダメージを受けることは無いがどこにスポーンするか敵に丸わかりになるのである。


なので割り込みするタイミングが重要だ。早すぎても遅すぎても俺を差し置いて彼女が倒されてしまう可能性が高い。ギリギリのタイミングを見計らう。


俺が参戦出来さえすればどのタイミングでも勝てるのだが、スポーン待機時間に封じ込まれる可能性がないとは言えないのでかなり彼女自身の技量に依存する形となるが、仕方ないだろう。


狙い目は奴のアルティメットスキルである巨人化を発動したタイミングだ。恐らくだが奴は巨人化した際に火力貫通で倒されたことがないからか、防御面に関してはかなりの慢心があるように感じる。巨人化スキルは確かに超強力なスキルの1つではあるが、一定以上の威力を持つ攻撃を仕掛ければ防御を貫通して撃破することが可能だ。最も、一定以上の威力と言っても、銃士クラスの最高難度クエストをクリアした際確率で手に入る戦闘機のミサイル攻撃だったり、4人チームで一分間詠唱を行ってようやく発動できる魔導士の極大魔法とかのレベルだが。


ーーーじゃあ無理じゃないかって?


幸いなことに、俺には戦闘機のミサイルなんか目じゃないほど高火力の攻撃手段を保有している。


予め手元のスマートフォンで公式サイトにアクセスし、決闘の割り込みシステム用のキャラをカスタムする。


割り込みシステムは原則として第二ラウンドからの参戦なため、物資を確保する時間が存在しない。なので予め公式サイトのキャラクターカスタマイズにて決められたコストの中で持ち込む装備を決め、スキルツリーから自分のスキルを選択する。


スキルは最初にメインスキル、次にサブスキルが、最後にアルティメットスキルと言った順番で発現していくのだが、さらにスキルツリーレベルを上げていくと第2のメインスキルやサブスキルが発生する。


それが発現したプレイヤーは自由に各種スキルを選択することが可能だ。スキル解放自体はとても容易で、3ヶ月くらいプレイし続ければメインスキルだけで3~4個発現ッできる。


今回装備はどうでもいい。できるだけ早く動けるよう可能な限りの軽装を選択していく。肝心なのはスキルだ。


大昔、俺自身が『刻の一撃』と名付けたスキルビルドがある。選択した全てのスキルを用いてとんでもない火力の一撃を叩き込むスキルだ。そのあまりにもオーバーキルな火力に加えて、一試合一回のみのアルティメットスキルをふんだんに使用して、メインとサブスキルもその攻撃を補助するため応用性が全くない。完全にネタスキルビルドだが、今回の試合に関してだけは非常に有効だ。


そうしてさくっとキャラを作り上げた俺は、モニターを見る。


自身のスキルにより圧倒的アドバンテージを手に入れた彼女は監視塔に登り狙撃の準備をしていた。


彼女のスキルには驚いた。この高校に入れているくらいなので強力なのは分かっていたがまさかここまでとは。


それにアルティメットスキルはまだ発動していない。一体どれほどのスキルが繰り出されるのだろうか。


強制スポーンまで残り一分


そろそろ俺も割り込みの準備を始めなくてはならない。


観客が入れるエリアの最前列へと向かう。ギリギリまで割り込みのタイミングを見極める。


せめていつでも入れるようにしておこうと観客エリアのさらに先、割り込み用待機エリアへと向かおうとする。するとスマートフォンが急に音を立てて鳴り出した。


いつも通知は切っているから音が鳴るなんてことはほとんどありえないのに、何なんだ?


『システム警告:どちらかの対戦者が割り込みを承認しない限りこれ以上先には進めません』


ーーー頭が真っ白になった。


以前はこんなことは無かった。恐らくだが度重なるアップデートにより追加された機能なんだろう。


7年間も逃げ続けたツケがここで回ってくるとは...


だがまだ諦めたわけじゃない。俺は大慌てで割り込みを承認してもらう方法を検索する。


割り込みを承認してもらう方法は2つあるようだ。


ひとつはオーソドックスな方法。俺が直接相手に申請して、それを承認してもらうやり方。これが最も確実かつ安全だが、これを行うには時間がかかる。そもそも今ここで申請したところで彼女がそれに気づくことはまず無いだろう。


2つ目は、大型モニターも周囲を監視するカメラがあるような大会場でのみ行うことが出来る方法。それは、単なる目配せである。


相手と自分の目を3秒以上合わせた状態で、相手が頷けばカメラが勝手に申請を承諾したと判断されて割り込みの許可が出る。


少なくとも狙うなら後者の手段だろう。いや、むしろそれしか手段残されていないという方が正しい。


観客席の最前列。彼女を最も見やすい場所に移動した俺は、必死に彼女の方に目配せをする。


残りカウントは十秒。間もなく第2ラウンド開始だ。


だがそこでもうひとつ重要なミスを犯していることに気づいた。


……今の俺、仮面してるから目線がどこいっているのか分かりにくいな……


これでは目配せどころか相手が俺に気づいてくれるかすら怪しい。観客席からの声はプレイヤーに届かないし、どうしたものか……


そう悩んでいたら、急に辺りを見渡し始めた。恐らく戦闘前のリラックスだろう。


それを見た俺は、今以上に怒りと闘志を滾らせる。


ーーー何故かって?


彼女の肩は震えている。それこそ今にも壊れてしまいそうなくらいに。


彼女の目は助けを求めている。きっと無意識のことなのだろうが。


ーーーー咄嗟に彼女と目が合った。


自惚れではない。確かに彼女は俺の方を見ている。一度目線をそらされたような気がしたが、すぐにまた目が合った。


世界の音が消える。二人だけの世界だ。


俺は意識することなく声を出していた。


「お前は、どうしたい?」


届くことの無い声なのに、聞こえるはずがないのに。それでも、確かに彼女は。


「勝ちたい!!勝って私の物語をここから始めるんだ!!」


こう言い放った。


途端に俺の世界は色を取り戻す。


何もかもが灰色に見えていた。どうでもいいと思っていたこの世界。


ーーーあぁ、世界は、こんなにも綺麗だったか。


久しぶりの世界は、思っていたよりずっと眩しい。


それでも、これからは目をそらさない。諦めない。全力で。


「俺は、お前を救ってみせる」


彼女はまるで俺の声が聞こえているかのように強く頷いた。


カウント、0秒。


俺は彼女目掛けて全力で走り出した。


俺の伝説を、ここから始めよう。



ーーー遥か遠い一番星に、歴史を刻もう。

ついに七翔くんが…!

全てはここから始まるみたいです。七翔くんも一見すましたクールさんに見えるけど実はちょっと天然っぽいポンコツだったりします。


割り込みシステムなんてリアルのe-Sportsにあったらたまったもんじゃないですが、そこはあくまでフィクション作品ということで見逃してください。



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