第十話 星姫 下(柚菜視点)
お待たせしましたーすみません
寝落ちしてました
広場の中心に設置されている四台のPC。そのどれもが最高スペックの高級品だ。キーボードやマウスもいいブランドのものを使用しているのが分かる。
正直な話、この手のゲームは一ヶ月と少しの練習だけでどうにかなるものでは無いと分かっていた。未だに自分の思ったようにキャラも動かせないし、AIMだって合わない。
誰かに教えてもらいたい所だけど、両親は論外だし、クラスの皆に聞くのは緊張して出来そうもない。高校の講師にコーチを頼むという手もあるが、その手を採用できるのは校内ランキングが上位の猛者だけだ。私のような底辺の人間には教えてくれる人なんて誰もいない。
「皆様よくぞお集まりいただきました!これよりgustone対謎の美少女の一対一デスマッチを開始します!実況はこのショッピングモールの名物と言われたメープルちゃんが行わせて頂きます!」
広場中に実況の方の声が響き渡った。いよいよ試合が始まると思うと震えと手汗が止まらなくなってくる。
ーーーこんな私が本当に何か出来るのか?
ーーー今からでも少年を置いて逃げれば助かるんじゃないのか?
そんな考えが脳裏をよぎる。だめだ。それだけは1番やっちゃいけないことだと私は思う。
人の犠牲の上に成り立つ仮初の平穏なんて、紛い物でしかない。その事を私は身をもって知っている。
あの事件以来、両親とずっと入れるのは幸せだと思っていた。でも心のどこかでは物足りなさを感じていたのだ。
私が大好きだったパパとママは、あんな姿の2人じゃない。私が本当に好きだった2人は、何かに熱中し、目標に向けてただひたむきに全力で走っていく、そんな姿だった。私もそれを追いかけたいと思った。でもそれは叶わなかった。
ゲームは嫌いだ。それでも私は、1番輝いていたあの頃に2人に憧れる。輝きの正体が知りたい。光を追い求めた先に何があるのか、それを知りたい。全力でなにかに挑んでみたい。そんな気持ちが湧き上がってくる。
「まぁでも、そんなのはこの試合を終わらせてからだよね!」
自然と自分を鼓舞する声が出る。
「お姉ちゃん...」
少年が話しかけてくる
「大丈夫。絶対に私は勝つよ。あなたはここで見ててね」
「うん!頑張って!」
自らの意思で助けた人間の声が、力になる。心に暖かいものを感じる。
これをもっと感じるためには、ひとまずはこんな酷い試合は切り抜けないとならない。
着々と運命の時は近づいてきているーーー
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「参加者を紹介しましょう!チャンピオン側に座っているのが、このショッピングモールが開設されてから今まで98勝0敗!彼がスキルによって繰り出す攻撃は強烈かつ高速!巨体から繰り出される猛攻を止められるのか!?[剛腕]のgustone!」
男は呼ばれて雄叫びをあげるがやはり観客も男の事をよく思っていないのか罵声やブーイングか飛び交う。だが勝負には悪は必要不可欠であることを証明するかのように、罵声とは裏腹に場は盛り上がる。観客もどこかでこの男が無敗を貫くことを望んでいるのかもしれない。
「対する挑戦者側に座っているのは飛び入り参加した謎の美少女!二次元の世界から飛び出てきたのかと見間違うほどの美貌からどんな実力が繰り出されるのか!?」
続いて私の紹介があった。あまりにも誇張した紹介に少し気恥ずかしくなるが、当の私はなにかする余裕はなかったので、反応することなくスルーしてしまった
観客の声が一瞬途切れた。みんな私の事見てるから、多分アピールも何も無い私に失望したんだろう。と思っていたらさっきの罵声なんて比べ物にならないくらいの歓声があがる。私が応援されている事実に少し驚いたけど、悪い気はしない。尚更負ける訳にはいかない。
「これより2分後に試合開始となります!皆さん準備はいいですかー?」
実況のそんな声が聞こえる。向かいに座る男は相も変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべながらこちらを見てくる。不快でしかない。
集中を高めていく。普通のプレイでは勝てない。何か勝つ手段を探せ。
そんなことを考えているうちにあっという間に2分は過ぎ去る。
「はい!準備が整いましたので試合を初めて行きたいと思います!皆さんいつもの掛け声の準備はいいですか?いきますよー?3……2……1……はいっ!」
「ゲームスタート!!」
この日の試合は一生忘れることなく私の心に残り続けるだろう。
ここから私と彼の物語が始まる。
最後綺麗な対比で終わらせられたと思うんですけどどうですかね?一章はゴリゴリのシリアスだけど二章からめっちゃラブコメするのでそっちに需要見いだしてる方は少々お待ちを...




