4 仕事3日目
今日で仕事3日目。
既に慣れた様子で勇馬はギルドにやってきた。
「こんちは~、仕事はありませんか?」
「おはようございます。そうですね~、いくつかありますのでお願いします。いつもの作業部屋へ付与をお願いする武具と依頼書をお持ちします。ああ、それから確認なんですが、この種類の付与はできないっていうのはありますか?」
受付をしていたエリシアの言葉に勇馬はちょっと間を置いてから答える。
「そうですね~。元々経験が浅いのであまり幅広くはやったことがありませんので、何とも言えません。取り敢えずはチャレンジだけでもさせてもらえることってできます?」
「ええ、大丈夫ですよ。ただ、失敗して破損させることだけはやめて下さい」
「はは……、善処します」
経験が浅いどころか、まだこのギルドに来てしか付与をしたことがない勇馬には答えようがなくごまかすしかなかった。
とはいえ、神からもらったアイテムを使う以上はよほどのことにはならないだろう。
そんな根拠のない自信が勇馬にはあった。
「お待たせしました。これが今日お願いしたいものです」
作業部屋で待っていた勇馬の元にエリシアが台車を押してやってきた。
エリシアが台車に乗せて運んできたものは昨日と同じ鉄製の武具だ。
「これらに依頼書通りの付与をお願いします」
依頼書にざっと目をとおすと、強化は強度1・5倍のものがある他、有効期間も1週間のものだけでなくちらほらと2週間や4週間となっているものもある。
また新たに重量軽減の指定がされているものがあった。
重量軽減は読んで字の如く武具の重さを軽くする効果を付与するものである。
ちなみに強度1・5倍という倍率は付与魔法ギルドが一般的に依頼を受ける武具の強度付与で最も高い倍率だ。使う魔力も多く、高い技術も必要とされるために報酬もそれなりに高くなっている。
一方、重量軽減については20%減がギルドとして受注するもっとも高いレベルの付与となっているが今日指定された付与は10%減止まりとなっている。
「納品期限は今日の夕方となっています。もし、無理そうでしたらすぐにお知らせ下さい。他のメンバーと手分けして対応します」
勇馬が「わかりました」と応えるとエリシアは作業部屋を後にした。
武具の数は昨日と同様50個となっている。
昨日は当初40個ほど割り当てがあったのだが少しでも稼ぎたかった勇馬は追加でもう10個ほど仕事をこなしたのだ。
勇馬が簡単に作業をこなすので今日は最初から50個が割り当てられている。
しかも作業難易度は前日に比べて大幅にレベルアップしている。
あまりにも勇馬が軽々と作業をこなしてきたためギルドとしては勇馬を試す意味もあってこの様な対応になったのだ。
普通、ギルドはもう少しゆっくりと依頼内容の難易度を上げていきその者の実力を試している。
新人付与師はどうしても見栄を張ろうとして自分の実力以上の作業をしようとする傾向にあり、張り切り過ぎて潰れるということはこれまでも報告されている。
そのため本人の申告は必ずしも鵜呑みにせず、段階を踏んで様子を見ながら仕事を与えるという対応をとるようにしている。
しかし勇馬の作業内容は新人離れしていることに加え、ギルドの内部事情から若干の期待も込めて勇馬に対しては例外的な対応がされていた。
いずれにしてもギルドとしては所属メンバーの潜在能力を正確に把握したいと考えており、そうすることでギルド全体としての受注キャパシティーを把握し、業務を円滑に回したいというのが第一だ。
そのためにも期待の新人である勇馬の『底』を早く見ておきたいという思いが見え隠れしている。
勇馬としてはやることといえばマジックペンで書き込むだけであり使用魔力は倍々に増えているはずだがこれといって身体に変化はない。
その一方で仕事の難易度が上がれば上がる程報酬も増えていくことから勇馬にとっても悪い話ではない。
「さて、今日もやりますか!」
勇馬は台車から武具を取り出すと作業台の上に並べる。
そして,これまでと同じようにマジックペンを顕現させて手に持った。




