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21 冒険者ギルドレスティ支部

 

「ユーマくん、ちょっといいかい?」



 勇馬は午前中で割り当てられた仕事を終えてアイリスとともにギルドを出ようとしたところをトーマスに呼び止められた。


「今から冒険者ギルドのギルドマスターに挨拶に行くんだけど一緒にいかないかい? まあ、本来だったらサブマスも一緒に連れていくんだけど今はいないのと、きみは一応役職待遇なわけだし適任かと思ってね」


 早く帰っても別にすることもないしこれも仕事の一環と思って勇馬は同行を承諾した。


 何よりも元ライトノベルオタクであった勇馬にとって『冒険者ギルド』という単語はやはり心躍るものがある。

 用がなかったために未だ行くことができなかったまだ見ぬ世界に興味がないといえば嘘になる。

 アイリスの同行も構わないということだったので3人そろって出かけることになった。


 そうして歩くこと5分。


 トーマスに連れられて冒険者ギルドレスティ支部へと到着した。




「……うちよりもだいぶ大きいですね」


 その威容に勇馬は驚き建物を見上げた。


 石造りの3階建の建物は縦にだけではなく横にも大きい。


 1階には食堂兼酒場も併設されており、夜ともなれば多くの冒険者でにぎわっている。


「おじゃまします」


 トーマスに続いて勇馬たちも建物へと入る。


 初めて見る冒険者ギルドに勇馬はきょろきょろと視線を彷徨わせた。

 そのさまは田舎から出てきたお上りさんのようだ。


 朝も遅い時間ということもあり、冒険者ギルドのロビーにはほとんど人がいない。


 受付カウンターまで進むと年若い受付嬢が対応してくれた。


「この度、付与魔法ギルドの臨時のギルドマスターとなりましたトーマスです。こちらのギルドマスターにご挨拶に参りました」


「伺っております。マスタールームにご案内致しますのでどうぞこちらに」


 奥から別の女性職員が現れて部屋まで誘導される。


 事前にアポイントをとっていたこともありスムーズに案内を受けることができた。


 そうして3階まで上がり、立派な扉の前でその女性職員は立ち止まると扉をノックした。


「ギルドマスター、付与魔法ギルドのギルドマスターがお見えです」


「どうぞ」との声がして女性職員が扉を開け、部屋の中へと案内された。


「失礼します」と声を掛けてトーマス、勇馬、アイリスの順にマスタールームへと入っていく。




「よく来てくれた。俺がこの街の冒険者ギルドのギルマスをしているウルガンだ。お互いトップ同士、ざっくばらんにいこうじゃないか」


 ウルガンは椅子から立ち上がってそう言うと事務机でしていた書類仕事を中断して応接セットのソファーを勧めた。


「この度、臨時の付与魔法ギルドのギルドマスターに就任しましたトーマスです。よろしくお願いします」


「ははっ、固い固い。もっと気楽にいこうや。それでそっちは? サブマスにしては随分若そうだが……」


 ウルガンの視線が勇馬を捉えた。


「彼はメルミドの街から私と一緒に応援に来たユーマといいます。若いですが腕は確かですので一緒にご挨拶をと思いまして。それから彼女はユーマの付き人をしている者でアイリスといいます」


 トーマスから紹介された勇馬とアイリスはその場で立ち上がり一礼した。


 ウルガンも付与魔法ギルドレスティ支部のごたごたについては把握している。

 というよりもそのごたごたによる最大の被害者は冒険者でありひいては冒険者ギルドなのでウルガンからすればトーマスや勇馬は救世主のようなものだ。


「おお、遠いところからわざわざすまないな! この街もメルミドに負けないくらいのいい街だからしっかり楽しんでいってくれ」


 勿論仕事をしっかりやったうえでな、という念押しを忘れないところがギルドマスターというところだろう。



「ここ数日でほぼ挽回できていると思います」


「最近急にクエストの受注が伸びたって話は受付から聞いている。正直助かったぜ、冒険者の流出がやばいことになっていたからな。ぼちぼち俺にも現役に復帰しろって話も出始めていたところだ」


 ウルガンは元高ランクの冒険者で引退したあと冒険者ギルドの裏方をやることになったという経緯もあり、冒険者の受けない仕事をときおりやらされることがある。


 会談の終わりに「これから発注を控えていた連中が噂を聞いて依頼を出すだろうけどよろしくな」と言われて、トーマスは苦笑いを浮かべた。


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