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5 試験の結果は?

本話でプロローグは終了です。


読んでいただきありがとうございます。

 

 勇馬が受付カウンターに行くと、トーマスと受付嬢が何やら話をしている。



「どうかしたかい? 何かわからないことでも?」


 勇馬に気付いたトーマスが気遣うように声を掛けた。


「いえ、作業が終わりましたので来たんですが……」


「はっ?」


 勇馬の言葉にトーマスはポカンとした表情を浮かべた。


 そして思わず近くにいた受付嬢と無言のまま顔を見合わせた。



(ああ、これは信じていないな……)



 勇馬はそう思いながらもトーマスを連れて作業部屋へと戻っていく。


「まあ、できたというのであれば一応は確認するけどねぇ……」


 トーマスは勇馬と一緒に作業部屋に入ると何とも言えない表情を浮かべながら作業台の上に置かれていた銅の剣を手にとった。



「鑑定」



 トーマスはそう唱え何かを読み取るように銅の剣に視線を走らせる。


 同じ鑑定をするとはいえマジックペンの付随スキルとしての鑑定と一般の鑑定では情報の見え方が異なるようだ。


 しばらくすると、トーマスは大きく目を見開いた。


 そして、一旦目を伏せ、顔を左右にふるともう一度「鑑定」と口にして銅の剣に目を凝らした。

  

 しばらく無言の時間が続く。


 勇馬は静かにトーマスの判定を待った。




「……何かの間違いだ」


 ぽつりとそう呟くとトーマスは呆然とした表情を浮かべながらふらふらと作業部屋から出ていった。


「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」


 何が起こったのかはわからず、勇馬は慌ててトーマスを追いかけた。


 結局試験の結果はどうなったのか。

 それが勇馬にとっては何よりも大事なことだ。


 トーマスはぶつぶつとつぶやきながら受付に戻ってきた。


「サブマスター、結果はどうでした? やっぱり駄目でした?」


 試験にならなかったと思い込んでいた受付嬢がトーマスに尋ねた。


「なあ、強度2倍の付与ってできたっけな?」


「あはは、何を言ってるんですか。銅の剣が強度2倍っていったらもう鉄の剣じゃないですか。金属素材で強度2倍の付与といったら伝説の大賢者サイモンがしたという話でしたら聞いたことがありますけど」


 トーマスを追いかけて受付まで来ていた勇馬はその会話を聞いて戦慄した。



(まずい! なんかやらかしたっぽい!)



 この世界の最低限度の常識は授かったが付与魔法についての常識はもらっていない。


 勇馬が施した付与は伝説級の非常識であった。


「どうやら私は疲れているようだな。今日はもう帰るよ。あとは任せた」


「サブマスター、しっかりして下さい!」

   

 受付嬢が自宅に帰ろうとするトーマスの体を掴んで引き留めようとしている。


 そんなやりとりを傍目に勇馬はこっそり作業部屋へ戻ると再びマジックペンを取り出した。


 そして銅の剣におもむろに『1』と『・』を書き足した。



(これでいいはずだ)



「鑑定」



 ――銅の剣【強度1・2倍(有効期間4週間)】



 果たして勇馬の思惑どおり、銅の剣の強度は大幅にランクダウンした。




「すみません。もう一度確認してもらえませんか?」


 勇馬は銅の剣を手に持って、未だに騒いでいたトーマスと受付嬢の元へ戻ってきた。

 

 試験中は作業部屋からの持ち出しは禁止だが既に試験自体は終わっているし、試験官がこの様子では話が進まない。


「トーマスさんはひょっとして1・2倍を2倍と見間違われたんじゃないですか?」


 勇馬はとぼけてそう口にした。


「そうですよサブマスター。単なる見間違いですって!」

 

 受付嬢がそう後押しし、トーマスは再度銅の剣を鑑定する。


「……確かに【強度1・2倍】だ」


 トーマスがそう言うと他の2人もほっとした表情を浮かべた。


「いや、すまない。見直しをしたはずなんだがそれでも見間違いをしてしまったようだ。私ももう歳かもしれないな」


 トーマスが自虐的にそう言うと、受付嬢は朗らかに笑い、勇馬は苦笑いを浮かべた。


「それで試験結果は……」


「うん、文句なしの合格だよ! この短時間でここまでされたら文句のつけようがない」

 

 ちなみに付与魔法ギルドに登録するための合格基準は、制限時間内に4週間有効の1・1倍以上の強度を付与することだった。

 


「とにかくきみはこれで我々の仲間だ。付与魔法ギルドはきみを歓迎するよ」


 勇馬は受付で付与魔法ギルドのギルドカードを受け取った。

 

 初級ランクとなっていて勇馬の名前が記載されている。


 これが付与師の身分証となる。



「実績を積んで技能が認められれば中級にあがることができる。きみは才能があるようだから期待しているよ」

 


 こうして勇馬は無事に付与師としての生活を始めることができた。


 ここまでお読みいただきありがとうございます。


 次話から第1章となります。


「もうちょっと読んでもいいかな」と思われましたら是非ブックマークをお願いします。



【小数点の表記について】


 横書きの場合、本来であれば小数点について「1.2」の様に記載するべきで、その様なご指摘もいただきました。

 書き始めた当初、作品について縦書きでお読みになる方もいらっしゃると思われたため、その場合でも違和感のないよう小数点について敢えて「・」中黒点にして書き始めました。

 それが良かったのかどうかは未だにわかりませんが、作品の全体を修正する場合、かなりの労力が必要となりますので、誠に申し訳ございませんが、小数点表記については「・」中黒点でさせていただいています。

 読みにくいかもしれませんがご容赦下さい。

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