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1 出発準備①

第2章開始です。


引き続きよろしくお願いします。


 出発の日が3日後に迫ったその日。



 勇馬は準備のためアイリスを連れて店を回り、旅路に必要な物を買うことにした。アイリスも主人である勇馬に当然同行するため2人分の準備が必要である。


 勇馬たちが向かう街はリートリア辺境伯領の領都レスティ。


 移動に馬車で1週間程度かかるため、携帯食に着替え、その他消耗品の持参が必要だ。


 店を回ってこれらを一通り揃えると、今度は武具を扱う店へと入った。



「いらっしゃいませ」


 中年の男性店主が勇馬たちを出迎えた。


 店の中には所狭しと武具が陳列されている。


 まず勇馬の目についたのはやはり武器の方だった。

 勇馬も一応は男である以上武器には興味があった。



(護身用に何か持っておきたいな)



 陳列されている様々な形状の武器を見て勇馬はそう思った。


 この世界では一歩街の外に出れば魔物や魔獣、盗賊など危険が溢れている。

 メルミドからレスティへの移動は特に危険とされている地域ではないものの、元々の危険の度合いは現代日本とは大きく異なる。


 まずは目についた鉄の剣に手を伸ばした。

 標準サイズの長さではあったが、武器の扱いに慣れていない勇馬にとってはやはりその重さは障害である。



(多少の重量軽減をしたくらいじゃまだきついだろうな~。それに剣を振り回すというよりも振り回されそうだ)



 勇馬は鉄の剣はあきらめて、ナイフと剣のちょうど中間くらいの長さのショートソードを手に取った。

 重さは先ほどの剣の3分の2程度であり、取り回しもぎこちないながらもスムーズにできている。

 勇馬はまずはこのショートソードを購入することにした。


「アイリスは気になる武器はない?」


 黙ってついてきていたアイリスはふるふると首を振った。


「じゃあ、護身用に取り敢えずは一緒のものでいいか」


 自分と同じショートソードを買うことにした。



「次は防具だけど……」


 一般の旅人が鎧を着こむということはあまりなく冒険者や騎士などでなければ身に付けない。

 しかし勇馬はやはり身の安全が心配だったため、何か自分に合うものはないかと探してみることにした。


 一応、鉄の鎧を検討してはみたものの着脱に慣れていないと着ること自体かなり大変であった。あとは何と言っても重かったのである。重量軽減の付与をしても根本的な解決にならないことから候補から外すこととなった。


 そこで候補として挙がったのが革の鎧である。


 勇馬はその中で身体の枢要部のみを防護するタイプのものに絞って探すことにした。

 革とはいえ、やはり通常の服とは異なり重量があるため身体には負担がかかる。慣れていない勇馬にとって最初はこのくらいから始めるのがいいと思ったのだ。


「すみません。このタイプのもので革の鎧を探しているんですけど」


「そうですね~。革の種類はいろいろありますので、何を重視するのかによってご紹介できるものは変わってきますよ」


 そう言って店主は革の鎧が陳列されているエリアに勇馬を連れてきた。


「一般的なのはオークの革の鎧ですね。一番リーズナブルで初心者冒険者もこれから始めますがやはり性能はそれなりです。次にこちらはバーンリザードの革ですね。頑丈ですが、ちょっと硬いので体を動かしにくいかもしれません。値段が張ってもいいと言われるのでしたらこちらのブルーバイソンの革がお勧めです。軽くて丈夫ですので移動が多い方でも疲れが残りにくいと言われています」


 確かにブルーバイソンの革の鎧は他の二つに比べて値段はお高めだ。


 勇馬は時間を置いて3つを見比べた後、試着をさせてもらって動きを確かめてみた。

 店主の話のとおりブルーバイソンの革の鎧は軽くて身体の動きを阻害しなかった。

 やはり値段なりの価値はありそうだった。


「安全には代えられませんのでブルーバイソンの革の鎧を下さい」


「ありがとうございます!」


 勇馬の言葉に店主はにこやかに応えた。


「それじゃあ、アイリスの分だけど……」


「私にはお気遣いは不要です。着慣れないものをいただいても持て余すだけだと思いますので」


 自分以上に力を入れたいと思っていたアイリスの装備であるが本人にそう言われてはそれ以上のことはできなかった。もっとも、いざというときのために細腕であるアイリスにも使える様にとバーンリザードの革でできた革の小盾を1つ買っておくことにした。


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