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18 勇馬を取り巻く周辺事情①


「こんにち……は?」



 いつものように勇馬がギルドの受付に顔を出すと見知らぬ女性が受付をしていた。

 

 勇馬の日常は朝一番で受付嬢のエリシアに笑顔で挨拶をしてもらって仕事を始めるというものだったのでのっけから期待が外れてしまった。



「あら、おはよう。初めて見る顔……それに黒髪黒目。そう、あなたがユーマくんね?」


 エリシアがかわいい系だとすればこの女性は綺麗系というのだろうか。そんな女性に名前を呼ばれて思わず勇馬はドギマギしてしまった。



「あたしはマリーよ。ギルマス付の秘書という肩書だけど受付もやっているの」


 長くくすんだ金色の髪の毛をさっと後ろに払うしぐさはできるキャリアウーマンといった風情だ。聞けばギルドマスターのウォルグについて王都まで出張に行っていたのだが、戻ってからは休みをとっていて今日から復帰したとのことだった。


「あなたの今日の仕事はこっちに用意しているわ。今日もお願いね」


 美人さんにそう言われてやる気の出ない男はいない。勇馬はいつもの3割増しの速さで作業を終えた。





 勇馬が仕事を終えて午前中でギルドを去った昼休み。

 職員休憩室では2人の女性がお昼ご飯を食べていた。今日から仕事に復帰したマリーといつもの受付嬢エリシアだ。



「今日、ユーマくんを見たわ。ギルマスが言うとおりかなりできるわね」


「ですよね? 私も最初はびっくりしましたもん!」


「今は中級って話だけど上級もすぐでしょうね」


「サブマスはもう上級の実力があるんじゃないかって言ってますしね」



 どの世界でも仕事ができる男はやはり注目を集める。



「それでエリシアちゃんはそんなユーマくんとどうなのかな?」


「……ど、どうといいますと?」


「とぼけないでよ。あたしがいない間にデートしたんでしょ?」


「デ、デートじゃありません! たまたま街で会ったので一緒に食事をしただけです!」


「それをデートっていうんじゃないかしら。まあいいわ。それでエリシアちゃんはユーマくんのことをどう思っているのかしら?」



 マリーの目が怪しく光る。


「べっ、別にユーマさんは同じギルドの仲間であってそれ以上でもそれ以下でも……」


 エリシアの声が尻すぼみに小さくなった。


「ふ~ん、じゃああたしがユーマくんの彼女に立候補しても問題ないわけね」


「えっ……」



 エリシアは鳩が豆鉄砲をくらったような表情でマリーを見た。



「だってユーマくんは付与師として将来有望じゃない? 性格だって今日みた感じ問題なさそうだし」


「だっ、ダメですよ~、ユーマくんは私が最初に目をつけたんですから」


「ふふっ、だったらちゃんと捕まえておきなさい。ぼやぼやしてるとあたしがもらっちゃうわよ」


「もう、マリーさんったら」


「そういえばユーマくんってどこに住んでるのかしら」


「『宿り木』ですよ。それが縁でこの前ロッシュさんから指名依頼を受けてそこの仕事もやってますし」


「ああ、フィーネちゃんのところの宿屋ね」



 マリーはそう口にすると年下の知り合いの顔を思い浮かべた。



 

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