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17 作業完了

 

 今回請け負った仕事。


 勇馬は防音付与の有効期間を3か月とすることに決めている。


 やろうと思えば1年以上の期間を設定できるかもしれない。


 しかし、建築物への付与は武具への付与よりも魔力が多く必要であるため、長期間の付与ができるとなると悪目立ちすると思ったのだ。



 勇馬は『完全防音(有効期間3か月)』と四方の壁にそれぞれ書いていった。


 念のため鑑定で確認をしたところ、入り口のドアには付与が掛かっていなかった。




「すみません。ドアの部分はどうしますか?」


 外で待機していたロッシュにそう尋ねた。


「ちょっと待っててくれ。施主せしゅに聞いてくる」


 確認のためオルドスのもとへと行ったロッシュがすぐに戻ってきた。


「ドアも同じ様にして欲しいとのことだ」

「了解です」


 依頼内容を確認して勇馬は再び作業に戻った。


「作業完了です」

「もうか? ちょっと早過ぎないか?」



 建築屋として付与師に業務を依頼することもあるロッシュは流石にその早さに驚いた。


 事前に5分という眉唾まゆつばな時間を提示されていたが正直ロッシュは信じていなかった。


 この世界、できないものをできるといって仕事を受注しようとする輩は枚挙にいとまがない。

 仮に今日中に作業ができなかったとすれば当初の提案を飲んでもらって部屋を替わってもらえばよかった。後日、付与をしてもらうことになったとしても作業の遅れをネタにいろいろとできるのでどっちに転んでもよかったのである。



「じゃあ、確認するぞ」



 ロッシュは宿のオーナーであるオルドスを立ち会わせ、その成果を確認する。


 ロッシュは鑑定スキルで壁を確認し、完全防音という効果が付与されていること、有効期間が3か月であることを確認した。


 この3か月という期間。

 建築物への付与としてもそこそこのものであることは間違いないが、何よりもたった1人でこの早さで仕上げたことはベテランで経験豊富なロッシュにとっても驚くべきものであった。


 しかし、ロッシュはそれを表情に出すことはしなかった。


 オーナーは部屋の中に従業員を入れて大声で叫ばせた。オーナーは廊下に他の部屋にと場所を変えて音漏れがないかどうかを確認した。



「完璧だ」


「まったく音が聞こえませんでした。これなら大丈夫です」



 ロッシュとオルドスは勇馬の仕事に驚きと喜びでもって応えた。




「ユーマ、きみは他の種類の付与もすることはできるか?」


 ロッシュははたと気づいて勇馬にそう問い掛けた。


「これまで武具の付与がメインでしたので何ができるということは言えませんが、取り敢えず挑戦させていただけるのであれば試させて欲しいですね」


 勇馬とロッシュは、まずは試しにとこの宿にあるいろいろな場所への付与をしてみることにした。


 勇馬はロッシュに促されるまま『防水』『断熱』『防炎』などの短時間の付与をやってみた。



「……おいおい、何でもいけるのか」



 勇馬がオーダーを次から次へと簡単にこなしていくのをみてロッシュは戦慄した。



「取り敢えず、緊急で防水付与をしてもらいたい箇所があるんだ。期間は工事資材が届くまでだから1週間の付与で十分だ。頼まれてくれるか?」


 ロッシュから追加の指名依頼も入り、勇馬は嬉々として仕事を続けた。



 こうしてロッシュとオルドスに完了確認書をもらった勇馬は次の日、ギルドで報酬を得ることができた。


 期限付きとはいえ一部屋の防音工事の報酬としてかなりの金額が手に入った。一時的な防水性能の付与作業も思わぬ臨時収入となった。



 こうして勇馬は奴隷の購入にまた一歩近づくことができた。


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