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13 打診

 調査隊が国境付近に到着して以降、アミュール王国から次々と難民がやってくるようになった。


 そして難民たちからの聞き取りの結果、衝撃的な事実が明らかになる。




「アミュール王国の王都が落ちたようです」


 その一報を受けた本部テントは蜂の巣を突いたような騒ぎとなりそれが事実かどうかをさらに確認するためより多くの者たちから聞き取りが行われることになった。


 そして最終的にはその事実は十中八九事実らしいということが確認され伝令兵によってレンブラム要塞そして公主へと伝えられることになる。


 勿論、最初にその情報が確認できた時点で初報として伝達はされている。


 しかし、ほぼ確定的であるというその確たる情報の重さはそれ以前のものとは比較にならない。



「しかし、アミュール王国は滅びたわけではないということですか?」


「はい、国王を始めとした上層部は王都から南部の街に逃れて態勢の立て直しを図っているようです」


 本部テントの混乱がようやく落ち着いた頃、勇馬は調査隊の隊長にこっそり話を聞くことにした。そんな勇馬の疑問にはそういった答えが返ってきた。





 その後も調査隊の調査結果を裏付けるかのようにラムダ公国を目指してやってくる難民の数は次第に増えていった。


 一応の待機場所となっている水場の周りには仮の住居やテントが並び難民キャンプとなっている。当面の措置として難民に対しては公国側から食料などの支援がされているがいつまでも続けられるものではない。


 調査隊の役割も終わりそろそろ撤収に入るのではないかとの情報が兵士たちの間で囁かれ始めたそんなある日、勇馬は自分のテントで休んでると突然呼び出しを受けた。


 調査隊の本部となっているテントへと赴くとそこには既知の人物がいた。


「代官様!」


「やあ、ユーマ。久しぶりだね」


 ダンジョン都市サラヴィの代官であるクライスその人であった。




「今回の件は公主様よりわたしが正式に責任者に任命された」


「それで私はどうして呼ばれたのでしょうか?」


 人払いがされた本部テントの奥で勇馬がクライスに疑問をぶつけた。


 特務大佐として武具への付与とポーション作りが仕事の勇馬にクライスが取り立てて時間を割く理由はない。


「ユーマ、単刀直入に聞く。きみはエリクサー、もしくはそれに近いモノを用意できるね?」


「!?」


 危うく声が出掛かったが辛うじて声を出すことを避けることはできた。


 しかし、その表情までは隠せない。


 元々日本ではただの大学生だった勇馬にポーカーフェイスは無理だった。


「なるほど。なに、わたしはそのことを他に言いふらしたりはしない。むしろ、そんなきみとはいい関係を築きたいと思っている」


「いい関係……ですか?」


「元々ダンジョンから出品されるアイテム、エリクサーのような貴重品はなかなか出てこなくてね。とはいえ、大陸中からこのエリクサーを目当てにオークションに参加する者は後を絶たない。是非出したいのだよ、その目玉商品を」


 一時期、ラムダ公国が戦争の当事国になった際には危機を感じてラムダ公国から国外に出ていった冒険者の数はそれなりの数になるらしい。

 その一方で周辺国の混乱もあってか戦争が終わった後に戻ってきた冒険者の数は戦争前よりも少なく、ダンジョン攻略は低調になっていることも出品物の不足の原因であるという。


 特に戦争によって大きな怪我を負った者は数多く、エリクサーに対する関心は高まる一方だ。


 ダンジョン都市を運営するクライスにとってはそのダンジョンから入手できるアイテムによってこの都市で開催されるオークションの価値を維持し続ける必要がある。


 そのためには定期的にエリクサーが出品されることは望ましかった。


「私としてはエリクサーを出品すること自体は構いません。話はそれだけしょうか?」


「いや、今からが本当にしたい話だ。ユーマ、きみ、この場所に街を作る気はないか?」


「街?」


「そう、きみの街だ。一応はラムダ公国内の街でわたしと同じような代官という立場になる。しかし、実際にはある程度の自治は認められる。そうだな、自治領といったところだな」


「自治領……」


「きみから提供を受けたエリクサーの対価として食料や物資を融通する。最初はマイナスかもしれないが、街ができ、人が居つけばいずれはプラスになるだろう。将来的にはこの国から独立して国にしたっていい。どうだい?」


 クライスは人の好さそうなニコニコとした笑顔で勇馬にそう言った。

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