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2 特務大佐

「主様、よくお似合いです」


「うん、似合っていると思うわよ。ふふふ」


「そうか? 何か着られている感じがするんだが」


 レンブラム要塞へと旅立つその日。


 勇馬は朝からかっちりとした軍服を着せられていた。


 事前にクライスが用意していたものでこのラムダ公国の軍隊の正式なものだ。


「それにしても代官殿は随分と主殿を買っておられるのだな」


「そうね、そこいらの兵卒ではないにしてもここまでしてもらっていいのかしら」


 勇馬の軍服に輝く階級章は大佐のものだ。


 勇馬は今回特務大佐の身分でレンブラム要塞に赴任するという形になっている。


 ここラムダ公国の軍の階級は現代の日本に近いものになっている。


 この国は小国であり、身分による階級ではなく能力主義を採用して優秀な者を積極的に登用してきた。そうすることで国防力を高め周辺国からの独立を守ってきたという経緯も多少は影響しているのかもしれない。


 勇馬の護衛として随行するアイリスたちにも軍の階級が与えられた。アイリスは特務中尉、エクレールとクレアは特務少尉の地位を与えられている。


 サラヴィからレンブラム要塞までは馬車で1日の距離だ。


 朝出発して着いたのは夕方前の時間だった。






「クライス閣下から話は聞いています。ようこそレンブラム要塞へ」

「歓迎ありがとうございます。職務に励みます」


 着いて早々、勇馬は要塞指令官であるアルベルトを訪ねた。


 アルベルトの階級は中将であり、他の要塞幹部たちの階級は少将や佐官という構成だ。つまり勇馬はこのレンブラム要塞には幹部待遇での赴任ということになる。


 勇馬も幹部としてこの要塞内での幹部会議に出席しなければならないが、それ以外はこれまでやっていた仕事とはほとんど変わらない生活となる予定だ。


 要塞という名称ではあるもののその全体像は大きな外壁に囲まれた小規模な街である。


 特徴としては要塞指令部と呼ばれる大きな塔のような建物が中央部にあるくらいだ。


 勇馬には要塞内部の幹部が居住する居住区内の建物が割り当てられた。


 勇馬の護衛であるアイリスたちも勇馬と同じ建物で生活することはこれまでと同じだ。

 



「……さすがに広いですね」


 勇馬に割り当てられた住居に入ると玄関を入ってすぐに天井の高い立派なホールがありアイリスが目を丸くした。


 勇馬たちの希望で特にハウスキーパーは入れないようにしているので家の中は勇馬と勇馬の奴隷たちだけだ。


「さっそく部屋を見て部屋割りを決めよう」


 要塞幹部の主寝室として作られたと思われる1階の一番広い部屋は勇馬の部屋に決まり、その他の部屋をアイリスたちが話し合って割り振りをした。


 その結果、勇馬の部屋の隣の部屋を護衛当番の当直室にしてローテーションで使うことになった。

 幸いそれ以外の部屋が2階の部屋を含めて3部屋以上あったため各人が自分の部屋を持ったうえでそのような運用ができた。


 その後は食事や家事の当番を決める。


 勇馬が仕事の日は外出時に随行する護衛は二人として、残りの一人が基本的にはその日の家事を担当することになった。


 今日は移動で疲れているだろうということで、揃って外食をすることにした。


 要塞内は下士官用の施設と幹部用の施設がそれぞれにあって分けられている。


 勇馬たちは事前に幹部用の施設を使うようにと言われていた。


 幹部会議への出席は少佐以上の階級の者に限られるが、施設利用上は少尉以上が幹部の扱いであるためアイリスたちは単独でも幹部用施設を利用することが可能だ。

 


「いらっしゃいませ」


 勇馬たちが入った幹部用食堂は食堂とは言えない格式だった。


 きっちりとしたタキシードを着た男性が入口で勇馬たちに頭を下げる。


 内装も華美ではない程度に煌びやかであり、部屋の隅では少人数ではあるが軍の音楽隊がしっとりとした音楽を奏でている。


 勇馬たちは席へと案内されるとメニュー表を渡された。


 そこで各自が思い思いのものを注文する。


 ここの支払いは給料からの天引きとなっている。


 アイリスたちは勇馬の奴隷であるため、この世界の常識であれば三人の給料は食事代の天引きがされたうえで勇馬が受け取ることが正しい話だ。もっとも勇馬にはそのつもりはないので各人に支払われるよう事前に手続きしている。



「新しく赴任された大佐殿にご挨拶を」


 最初の料理が運ばれてきたとき、料理と共に現れたのはこの食堂の料理長だった。


 勇馬は改めて自分の待遇の大きさを感じることとなった。

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