表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/226

18 獣王国からの使者

 戦争が終わっても勇馬のポーション作りは続いた。


 とはいえ、勇馬はポーションを樽に入れておくだけで瓶詰め作業は相変わらず孤児たちの仕事だ。


 戦争前までは聖教会が孤児院の運営をまがりなりにもしてきたが戦争後はセフィリアの『優真教』が孤児院を引き受けることになった。代官のクライスからすれば敵国となった神聖国と一体の立場にある聖教会に対して孤児院の運営名目であっても補助金という金銭の支出をすることには抵抗があった。実際に聖教会も補助金の一部を孤児院運営以外に流用していた事実があるためクライスの危惧は正しいものだった。


 孤児院の運営は財政面においては街からの補助金が、人手については戦争後に聖教会から『優真教』に鞍替えしてきたシスターたちが戦力になっていた。このシスターたちは以前からセフィリアとともに孤児たちのために炊き出しをしていた面々でありセフィリアとは戦争前から親交のあった者たちである。


 元々ラムダ公国の聖教会、とりわけ若手のシスターや助祭は純粋に神を信仰していて人助けにも熱心であった。彼女らは聖教会の中でも穏健派に属しており元々今の聖教会の主流派となった急進派への抵抗があったことから、戦後に限界を超えて聖教会からの大量離脱となった。


 セフィリアとしても孤児への援助を一緒に行っていた元聖教会のシスターたちとは価値観を同じくしているという認識であったため『優真教』への帰属をあっさりと認めた。


 ラムダ公国の聖教会は以前から穏健派が多数であったが、戦争開始以降、急進派は国を出て神聖国に戻っている。残った穏健派は『優真教』への鞍替え組と聖教会への残留組に別れるが前者がやや多いというところだろう。


 こうして新しい生活が始まったある日、勇馬のパーティーハウスを訪ねてきた者たちがいた。


「こちらに錬金術師様がいらっしゃるとお聞きしたのですが……」


 訪問者に玄関で対応しているのはメイド服に身を包んだアイリスである。


 そのアイリスとしてもどう応じたらよいものかわからなかったため主である勇馬にお伺いを立てることにした。もっとも馬鹿正直に主に確認をとるなどと伝えるのは憚られた。


あるじはただいま留守にしております。ご用件を承りますが?」


「でしたらこの手紙を錬金術師様にお渡し下さい。私たちはしばらく『月の宿』という宿に宿泊していますので、そちらまでお返事をいただくかお会いしてお話する機会をいただければ幸いです」


「承りました。しかとあるじに伝えさせていただきます」


 訪問者はアイリスに手紙を託すと直ぐに出て行った。

 アイリスは直ぐに2階にいた勇馬へと手紙を渡し、いきさつを伝えた。



「……なるほど」


 勇馬は手渡された手紙を一読し机の上に置いた。


主様あるじさま、どういったお話でした?」


「訪問者は獣王国の使者で俺に獣王国に来て欲しいそうだ。ポーションを作って欲しいらしい」


「ポーションですか?」


「ああ、これまではこの国の錬金ギルドを通じてポーションを購入していたようだがこの国と獣王国との国境付近で神聖国の兵士が物流を妨害しているそうだ。それでポーションを作れる錬金術師を獣王国に呼んで現地生産をしたいみたいだ」


「それで主様あるじさまはどうされるんですか?」


「あらかた条件が書いてあるんだけど悪くない話なんだ。最終的には使者と会ってから決めたいな」


「わかりました。それでは私が連絡に行きましょう」


 勇馬は会って話をする日時の候補をいくつかあげてアイリスに伝えた。


 アイリスは勇馬の言葉をメモにとると使者たちの逗留する『月の宿』へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ