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8 決意

 

 勇馬が付与魔法ギルドへ登録して1週間。



 中級付与師としての仕事も十分にこなせることがわかり勇馬は自信を深めていた。


 これまで割り当てられた仕事は全て午前中には終わらせることができており、それで得られる収入は自分一人が生活するだけならば十分すぎるほどの金額だ。



(まずは日本にいたとき並みの生活水準にしたいな)



 この世界ではお金を出せば相当レベルの高い生活水準を享受することができる。


 この世界の流通は現代日本には当然及ぶものではないが食に関しては食い意地が張っている貴族が多いからか食材自体はいろいろなものが流通している。もっとも遠方の物は運べる量も少ないことから値段はどうしても高額にはなってしまう。


 そしてこの世界にはないものが電化製品である。

 この世界には冷暖房器具や冷凍・冷蔵庫と同様の機能を持つ魔道具が存在しているもののこちらもとんでもなく高価なものであり裕福な商人や貴族などでなければ手が出ない代物だ。


 勇馬は自慢でも何でもなく事実として中級付与師として十分に稼ぐことが出来始めている。


 付与師はかつて付与魔法使いと言われていたその名前のとおり『魔法使い』である。


 この世界で『魔法使い』という存在は端的に言ってエリートだ。


 貴族のように無駄なものにまでお金を掛けることまではできないかもしれないが、快適に生活を送ることができるだけの魔道具を揃えることは不可能ではない。



 次に勇馬が考えたのはやはり女性である。

 勇馬も年ごろの男でありやはりそういうことは大好きである。



(せっかくの異世界なのだから異世界でしかできないことをしたい!)



 この世界には人権という概念自体が存在しない。

 売ってあるものは奴隷だろうと春だろうと年齢関係なく買い放題である。


 異世界もののライトノベルのお約束といえば奴隷を購入していちゃこらするのが定番であることを勇馬は十二分に理解している。


 どうせ元の世界には戻れないのだ。

 だったら昔妄想していたあれやこれやを実現しなくてどうするのか。まず頭に思い浮かんだのは先日奴隷商の行列で見かけたハーフエルフの女の子であった。



「よし、決めた! 俺は奴隷を買う!」



 決して自分から普通の女の子に声を掛ける勇気がないからではない。

 先日エリシアとたまたま一緒に食事をしたことはあったものの次の日に会ってもいつもどおりだったこととか、エリシアは誰にでも優しくて自分が勘違い君だったんじゃないかと落ち込んだこととかは断じて関係ない。


 山があるから山に登るのであり、奴隷が売られているから奴隷を買うのだ。


 勇馬はそう自分に言い訳しながら力強くそう決意した。



 しかし、奴隷は無料ただではない。『異世界での最低限度の常識』では奴隷は安いものから高いものまで千差万別であり返って参考にはならない。



「わからなければ聞いてみればいいか」



 仕事はいつも午前中には終わっている。今日は、仕事が終わったら奴隷商館に行ってみることにした。





 

次話は本日午後に投稿予定です。

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