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1 異世界転移は突然に

 はじめまして。

 お越しいただきありがとうございます。


 最初のテンプレ話ですので打ち切りのご判断は次話(もしくはプロローグ終了)まで持ち越していただければ幸いです。

 

「というわけで異世界へようこそ」



 柊勇馬ひいらぎゆうまは気が付くと1人の男の前に立っていた。


 男の身長は170センチくらい。

 ややぽっちゃりとした体型をしており、古代ギリシャやローマの男性がまとっていたキトンと呼ばれる純白の貫頭衣らしきものを身につけている。


 勇馬はいつもどおりに自分の部屋の自分の布団に入って就寝したはずだ。

 自分のいる場所を確認しようとしたものの辺り一面が白い世界であるために窓のない狭い部屋にいるのか広大な白い空間にいるのかさえわからない。 


(これは夢だろうか?)


「これは夢ではないよ」


 勇馬は自分の心の声に答えた目の前の男に驚くとともにある可能性を導き出した。


(この展開はまさか……)


「そのまさかだよ。あなたは地球からこの世界に転移したんだ」


「……神様?」


 ためらいがちに尋ねた言葉に目の前の男は静かに頷いた。


「人間たちからはそのように呼ばれているよ」


 唖然とする勇馬に対して異世界の神は話を続ける。


「地球の管理者、あなたたちが呼ぶところの神があなたの願いを叶えてあなたはこの世界に来ることになったはずだが?」


「願い?」


 勇馬はまさか自分の意思で異世界にやってきたとは思ってもいなかった。


 それは何かの間違いではないのか、そう思った。


「あなたが中学生というときにあなたは神社という場所で祈ったと聞いているよ。異世界に行きたいと」



 中学生という単語を聞き、勇馬は悶絶した。



 あのころは多くのライトノベルを読み漁り異世界への憧れを確かに持っていた。それもかなり強く。


 端的に言って重度の厨二病患者であり今から振り返ると黒歴史でしかない。


 そのころ同じ趣味をもっていた友人同士(ただし男子限定)で初詣に行き勇馬は確かに神に祈っていた。


 異世界に行きたいと。



「……何てこった」



 勇馬はその場に膝から崩れ落ち両手を床についた。


 勇馬は今年大学に入学し、今は大学生として日々を過ごしていた。

 今でもライトノベルを読んではいるが厨二病はとっくに卒業し、第一線からは身をひいているつもりだ。


「その願いって撤回することは……できないですよねぇ」


 顔をあげて尋ねようとしたが目の前の神の表情からそれは無理だと悟った。



(この流れは間違いなくそうだろうなぁ)



 ライトノベルの流れを熟知していた勇馬からすればこの流れは予定調和だ。


「突然、俺……いえ私がいなくなっても「そこは管理者の力でどうとでもなるよ」


 よろよろと立ち上がりながら言い切る前に異世界の神から心配無用とのありがたい言葉をかけられた。



(腹をくくるしかないか……)



 ライトノベルのお約束を勇馬は十分理解している。


 この場でじたばたすることは無意味であり、元の世界に帰らせろと騒ぐのはモブの役割だ。


「地球の管理者から餞別せんべつを預かっているよ」



 そう言って渡されたのは一本のマジックペンである。キャップは黒色だ。



「地球の管理者が言うには、魔力を使って力を発揮するらしいよ」


「魔力があるんですか?」


「私の管理する世界には、魔力も魔法もある。あなたたちが言うところのファンタジーの世界。あなたが地球の管理者に祈った、あなたが行くことを望んだ世界だよ」



(ということは剣と魔法があり、魔物や魔獣が闊歩する、何となく中世ヨーロッパ風な世界ということか)



「地球の管理者はあなたが望む世界を探すのにかなり苦労したそうだよ。それで時間がかかってしまったと聞いているよ」


 だったらそんなどうでもいい願いなんかは放っておいて誰かのもっと切実な願いを叶えてあげて欲しかった。

 勇馬はそう思ったものの今さらどうにもならない。


「それにしてもどうして餞別せんべつがペンなんでしょう?」


「地球の管理者から渡されただけなのでよくわからないよ。ペンは剣よりも強いらしいよ」


 その言葉を聞いて勇馬は内心驚いた。

 勇馬は好きな言葉や座右の銘を聞かれると『ペンは剣よりも強し』という言葉をよく使っている。どうやら地球の神は勇馬のことをよく観察していたようだ。


「私からも餞別せんべつを授けるよ」


 異世界の神からは、異世界での最低限度の常識、異世界の環境に適応した身体、そして当座の生活費をもらうことになった。

 勇馬はお約束のチート能力を希望したが地球の神からのマジックペンがあれば十分とのことでその願いは却下された。


「あなたのマジックペンはあなた専用の道具で使わないときには消すこともできるそうだよ」


 そう言われて勇馬は手に持ったマジックペンに「消えろ」と念じるとマジックペンは手の中からパッと消えた。

 今度は手に取ろうと意識をしてみるとマジックペンはいつの間にか手の中に現れていた。


 勇馬に渡されたマジックペンはその名のとおり魔法のペンだった。



「そろそろ時間だ」



 異世界の神がそうつぶやくと世界が光りに包まれる。

 

 勇馬はあまりの眩しさに右腕で自分の目を覆った。


「あなたはアミュール王国という国にあるメルミドという街の郊外に降り立つことになる。まずはメルミドの街に行くといい」



 異世界の神の声が遠くから聞こえるとさらに周囲に光が満ち溢れ、そして弾けた。


 はじめまして。

 

 私のような『ぽっと出の新入り』の作品にたどり着いていただいたこと自体に感謝を申し上げます。

 

 読んでいただきましてありがとうございました。

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