1話 天使と会って異世界に行く話
初投稿、小説投稿は初となります。
よろしくお願いします。
色恋に興味がない女子として生きてきた。
男の子に恋愛感情らしきものは抱かないし、だからといって年上年下同性どんな相手にもドキドキは感じない。
無性愛者ってやつなのかなとは思うけど恋愛はしてみたいし、異性への興味はある。
でも、早18年。
私はついに恋愛を知らず高校を卒業した。
大学は必死に勉強して合格することができたが…
このまま大学へ進んでも恋愛はできるのだろうか?
恋愛への意欲がないのではない、私はもっと…
危険なハプニングや本当に困った時に助けてくれるような…
そんな出会いを待っている気がする
✾✾✾
眠りから覚めたような、靄が晴れるような、そんな気分。
閉じていた目を開けて目の前を確認する。
「おっはよーございマスッ!」
目の前には金髪碧眼の美少年がいた。
「………君は?」
「僕は『天使様』だよ!お姉さん自分がどうなったかわかる?」
無邪気な笑顔を向けながら自分を『天使様』という少年。
なんだか神聖な雰囲気と宝石のように輝く瞳で天使だと言われても納得してしまうような、厳かなオーラ。
なんだか羽も見えて…
「羽があるッ!?」
その少年の背中には確かに羽が生えていた。
ついでに頭の上に輪っかもある。
これじゃ…まるで本物の…
「そう!本物の天使だよ!所で自分がどうなったか…」
なっ…!?
心が読まれた!
いや…羽があるって言ったんだ、少しくらい考えれば本物かどうか疑っているかなんて分かっただろう。
「あの…心は読んだんだけど…、僕の質問聞いて…」
天使なんて実在したの!?
なら私が今まで祈ってきたガチャ運は!?
昔、神社に行ってソシャゲの★6ルシファーを当てれるように納めた500円という大金を爆死によって返された時から信仰を捨てちまったわよ!
「おねぇ…あ、駄目だこれ」
ん…?
あ、神社は天使と別よね、教会ならまだしも…
というか天使ってこんなに美少年なのね、以外だわ…
『お姉さんちょっと現実に戻ってきてねー』
「へ…あぅ!?」
脳内に直接声が入ってきた!
「お姉さん僕の話を全然聞けてないよ…」
そ、そういえば何かずっと言っていたような…
「お姉さん、自分がどうなったか覚えてる?」
自分がどうなったか…?
そんなの…高校を卒業して友達と写真撮ったりして学校を出て…帰って…
あれ?
私、家に帰れた記憶がない…
「あ、そこまでなんだね〜」
陽気に話す美少年の天使は私のさっきまでの思考を読んだようだ。
かわいい美少年に心を読まれると少しぞくぞくす…
「ごめんね、僕Sにはなれないよ」
心を読まれてるの一瞬忘れてたわ
読まれてるの恥ずかしいから変な事考えないようにしとこ…
「ごほんっ…えとねお姉さん。実はお姉さんは卒業式の帰り道に事故に合っちゃったんだ…」
事故?
「そう、そしてね…パニックにならないでほしいんだケド…」
薄くでも笑っていた天使の少年は笑みをやめ…
「お姉さんは死んじゃったんだ」
………え?
死…?
私が死んだ…
体の血の気が引いていく感覚と同時に鮮明に思い出す。
自分の肉が裂かれながら車にのしかかられた重みを…
「……っ!!」
「うん、辛かったよね痛かったよね」
吐きそうになった私の背中を天使の少年は屈んで撫でてくれる。
私は…死んだの?
いや、あの状態になって生きているなんて奇跡はないだろう。
そっか…死んだんだ
せっかく大学に受かったのに。
あ、カナからケーキもらうはずだったのに貰えなかった。
明日から入学祝いの旅行にも行くはずだったのになぁ。
「お姉さん」
じっと見つめる天使の少年の瞳は、我慢するなと言っているような、無邪気な少年の雰囲気はない。
想像したような、慈しむような天使を見る。
少し見つめているとぽろりと涙が落ちる。
そこからは、止まらない。
私は他がどうなってるかも考えずに涙を必死に流して、思ったことを口から吐き出す。
「お母さんにもお父さんにももう会えない!友達だって!大学の生活だって楽しみにしてた!やりたかったこと…まだ全然できてない!!」
天使の少年撫でる手はいつのまにか頭に変わっていて、それだけで受け入れてくれているような、母のような不思議な安心感を感じる。
「まだ…生きたかった…」
それを言うと、私は真っ白になって何も口から出なくなった。
漠然とした思いはまだ18歳の私にずっしりとのしかかった。
「……ごめんね、酷なことを教えちゃって」
私はふるふると頭を振り
「…ううん、変な所見せちゃってこっちこそごめんね」
少年の見た目をしている相手に自分の情けないところを見られていると感じると少し見栄を張ってしまう。
眉を下げて申し訳なさそうに話し始めた天使の少年は、私の目をしっかりと見ていた。
「お姉さんには、別の世界でとある人を助けてもらいたいんだ」
天使の少年に言われた言葉はなんだか現実感のない意味だった。
「別の世界で…人助け?」
思わず聞き返してしまった言葉に、天使の少年は頷く。
「うん、これから詳しく話すんだけどね」
長い話になるよ、と言って天使の少年は話し出す。
「僕はとある神様の使いなんだけど、その神様が司ってる世界の主な惑星は人間がいて魔法や剣を使い、魔物が蔓延る世界なんだけど。その世界の魔物と人間の均等が崩れて今大変な事になりそうなんだ。だから神様は原因である強くなりすぎた魔王を倒して強制的に世代交代させるために人間側の勇者として君と同じ世界の人間を魔王に立ち向かえる才能を与えてその世界に転生させたんだ。」
別の世界?魔法に勇者?魔王…
ファンタジーゲームが好きな私が必死に理解しようとしているが現実離れしすぎて思考が纏まらない…
そんな私に容赦なく天使の少年は話を続ける。
「でも、勇者を転生させたはいいんだけどどうやら異常な存在が色々入り込んでいるみたいで…その存在は行動が危ういんだ。このままだと勇者がその異常な存在にそそのかされたり、ちょっかいを出されてせっかくの勇者が使い物にならなくなってしまう。そこでだ!」
頭をウンウン言わせながら言葉を反芻していた私は天使の少年がばっとこっちを向いた瞬間にはっとする。
「お姉さんにはその異常な存在が勇者のヒロインにならないように勇者の正式なヒロインになってもらいたいんだ!」
キメ台詞のように出された言葉は、私をぽけーっとさせるのに足りる内容だった。
ヒロイン…?男の子が主人公の物語において主人公が一番大切にする女の子というヒロイン?
それの正式な、勇者の、ヒロインに私がなる?
「は…はぁあああああ!?」
悲しい気持ちも引っ込んで私は叫んだ。
「無理無理無理無理無理!私の人生知ってる!?恋愛とは程遠い平凡な人生だった、ただの享年18歳女子よ!」
内容は頭からすっ飛んで訴える。
私その条件にめちゃくちゃ合わないと思うんですけど!?
「い、いやね僕も恋愛経験豊富な方がいいのかなって思うんだよね…けど神様が『勇者は童貞だから相手も初々しい方がいいでしょ!そして恋愛初心者の女の子が性癖みたいだし!』って」
性癖!?性癖ってなに!?
やらしい目で見るための総称!
性癖の女の子が童貞の前に出されたらどうなるかわかってる!?
きっとめちゃくちゃにされるのよ!いやあああああああああああ!
「違うよお姉さん!びっくりしすぎて思考が酷いことになってる!落ち着いて!」
「いやああああああああああああああ!!」
✵✵✵
「先程の事はお忘れください天使様」
落ち着いた私は華麗なる土下座をキメながら懇願する。
「うん…衝撃的な内容だったよね、こっちこそ…なんか色々とごめん…」
色々となんて言わないで!恥ずかしくて死にそうなのよぉ!
「それで…」
「転生して…ヒロインになるか…ですよね」
正直ヒロインなんて主人公でもない、ましてやヒロインになれるかも分からないで自分の知らない世界に飛ばされる。
そんなの不安で、怖くてたまらない。
でも…
「私は…何もできなかった。恋愛も冒険も社会に出て自由になることすら。」
大学にも行けず、自分から何かにチャレンジすることも、大切な恋人を作る事も。
「私、その異世界に行ってその使命を成功させて、恋愛をしてみたい」
勇者の周りのヒロインになりそうな女の子を蹴散らすだけでいい、魔王の事が片付いたら勇者を蹴って他の出会いも探してもいい。
私は地球で、できなかった事をしたい。
「ありがとう!本当に助かるよ!あの世界が破滅しちゃうと神様も大変な事になっちゃうから…神様の無事も君にかかってる!そしてついでに神様の使いである僕の無事も!こんなこと言っておいてなんだけど頼りにしてるよ!」
……やっぱりこの天使様、Sになれるんじゃないの?
✾✾✾
私はエリー・アリスロンド。
少しだけ大きな街で暮らす7歳の女の子。
……ええ、私ですよ。
無事、異世界に転生しました。
前世の私も踏まえて自己紹介をしよう。
誰にって話だけどなんとなくそうしたい気分なのよ。
私はエルチャーワールドという異世界に転生した。
エルチャーワールドは前世で私達の住む惑星を地球って呼んでたみないな、そういう感じの世界の名称。
そのエルチャーワールドの一国、シエルリアス王国にある少しだけ大きな街、シアルタ街。
そこに住む7歳の女の子、エリー・アリスロンドとして転生した。
転生したと言っても前世の記憶を取り戻したはつい最近で、少し前までは7歳の少女として過ごしていた。
私は今までのいつも通り、朝起きてご飯を食べている。
私が転生した家はザ・庶民って感じで、母はとても美人で優しい。
父はちゃんと仕事をして私達を養って、ついでに尋常ではないほど私達を愛しているが、よい父だ。
でも私はあの天使様からの使命を果たすという、生まれる前からの目標があるのだ。
そしてその天使様は、私が使命を達成できるように、勇者はちゃんと私と接点がある。
ドッバァァアアアアンッ!
「なんだなんだ!?」
「またロイルくんかしら?」
朝食を取っている父よ、落ち着け。
いつものことだ。
そして母よ、流石だ、慣れているな。
さあ、そろそろだ。
「あれ?俺また何かやっちゃった!?」
窓から見える隣の家、その庭で魔導書片手に周囲に焼け野原を作っている少年こそが。
私の使命の対象。
今後勇者になる予定の、ロイル・アーバンド少年である。
カクヨムでも連載しており、カクヨムの2話を1話にして投稿しております。
短くてもいいから早く更新を!という方はカクヨムもどうぞ(いるのかな?そんな人)