天使結晶の発現と可能性
そして私はベイグルに戻ってから一週間ほど何をするでもなく過ごした。
するとある噂が流れてきた。
『天使結晶』と呼ばれる新たな素材アイテムがいつの間にか追加されていたらしい。
どうもソレは加工する事で魔法関連の能力強化用アイテムに変化するらしい。
そして、そのアイテムは強大なエネルギー源にもなりうるのでは?とか魔法版石炭だとか魔法増幅機だとか色々な話が情報屋を通さなくても入ってきた。
既に私も一個持ってるし、正直その程度の話だと思っていた矢先私は呼び出された。
「何から話しましょうか…既に天使結晶の事はご存知ですね?」
「まあ、持ってるしね」
「ならソレが魔法を強化することが出来ることもご存知ですね」
「噂程度に」
「では天使結晶が大輝練結晶の付近で多く産出することも?」
「知りませんでしたがそんな気はしてました」
「実は少し不味い事になってまして、隣国フィルディフィア国がとある技術を手に入れたんです。そのとある技術って言うのが、天使結晶を別のエネルギーに変換すると言うもので彼らはそのエネルギーを『Oエネルギー』と呼んでおり、それは練結晶の触媒とすることで練結晶を急激に成長させる事ができるらしく…紫結晶を大量生産して高速で飛行できる乗り物を開発したのです」
要するに飛行機ができたと…どこの兄弟が作ったのか…
「そこまではいいのですが、その技術を売った人間がベイグルの近郊に居たんです。彼を」
後ろの扉から青い髪の少年が衛兵に連れられて入ってきた。
「領主殿、俺は確かにベイグル近郊に住んでるけど、あの森は治外法権ですよ?そうやってお宅の王さまと協定を結んだし、俺は領主殿とも自由商売に関する取り決めをしたと思いますが?」
「ミナヅキ殿、事は一個人間の問題ではないのです、そんなもの無効に決まって…」
「あ、奇遇ですね。こんな所でも顔を会わせるなんて」
「その技術を売ったのってもしかして…」
『(ゲ:彼)(ソ:俺)です』
「取り決めでは俺はお宅の国の情勢に直接関与しない、求められたときは最優先で技術を提供する、代わりに自由な商売と技術開発と森の治外法権を許可すると言うことになっていたはずですので、俺がお宅の隣国の王さまと商売してもいいはずなので、今回俺に非はありませんよ」
「事は既に戦争の一歩手前にあるんですよ!?何を悠長に協定の話をしているんですか!!」
戦争!?ただ飛行機を作っただけで!?
「まあ、いい機会ではありませんか?これを機にフィルディフィアを落としてしまえばいい。それで問題だった麦問題も解決するし俺が開発した飛行円盤の問題も解決する」
「問題は戦争に動いているのが私達だけでは無いことですね」
「他国もフィルディフィアを驚異となして動き出していると?」
「そう言うことです」
「一つ聞いてもいいですか?誰が俺がその技術を売ったと貴方に教えたんですか?」
「ベイグル領の情報屋から知りましたね。名前は出せませんが」
「相手方とは高度な対聞き耳スキルのバフのかかった窓のない部屋で話をしたんです。その場に居たのは俺と相手方のみ、この秘密交渉を要求してきたのは相手方で、かつ俺も情報を漏洩するメリットはない。信用第一の仕事なのでね。なら何故漏れたのか、きっと他にこの戦争を待ち望んでいた人間がいるはずですよ、そいつを取っ捕まえて…」
ゲイルさんはソウジ君の殺気と言うかなんと言うかでちょっと引き気味だ。
するとメールが来た。
私はそれを開いてみる
『ジッシーズ・オンライン広報部です。これより特別イベント「天啓戦争」の開催を宣言します。内容は以下の通り。戦争中の各国に参加して戦争に参加し自分の参加国を勝利に導いてください。各戦場での戦果が今後の領土分配に直結します。各戦場での勝利条件は「その場から自国以外の人間を全て駆逐する」又は「相手が降伏する」です。イベント期間中はNPCが死亡した場合はそれぞれの参加地区にリスポーンします。なお、イベント期間は戦争の終結までとします。その他、敵国兵の殺害数や捕虜にした数や勝利した戦場の数等に応じて各種報酬を用意しております。皆さんのご健闘を祈ります』
「え?ケイは何を考えてるの?」
「これは、大変な事になりましたね」
「チッ、アイツめ人がリアルダンジョン攻略してる時に…」
「私、ちょっと急用が出来たので失礼しますね」
「で、領主殿?俺を呼んだのはお説教の為では無いんですよね?」
「協定に従い、貴方の開発した飛行円盤を私達にも提供してもらいますよ」
「だろうと思いましたよ。これが設計図と練結晶の培養方法ですね。これ以上は追加料金を要求しますよ?協定に従ってね」
ソウジは二つの紙束をゲイルに渡す
「何が欲しいのですか?」
「情報です。renrenと言う人外なプレイヤーを探してください。きっと戦場でかなりの功績を挙げるので解りやすいと思いますよ」
「それに対する私達への見返りは?」
「そうですね。コレなんかどうでしょう?」
更に紙束を一つ取り出す
「コレはOエネルギーをMPに変換する事が出来る機構です。コレを使えばそれなりに使える対空砲が作れると思いますよ」
「足りませんね」
「欲しがり屋さんですね…」
ソウジは渋々もう一つ紙束を取り出す。
「俺が開発した、ありとあらゆる効果と逆の効果を持つようになる薬品のレシピです。溶質とした物と逆の性質を得るようになります。これに紫結晶を溶かしてやれば自由落下より速く落下する物質が作れますよ。まあ使い方は人各々ですが」
ソウジはそれを机の上に置いて部屋から出ていった。
「はあ…」
ゲイルはその場でため息をつくと手でサインして衛兵を下がらせた。