バトンタッチ
双刀斬姫のグレイヴロードEP10を水無月蒼次が改編した物です。
あらすじ程度に捉えて貰って…
「間に合った・・・!」
レイの後を追って早数分、なんとか瀕死状態のレイと合流出来た。
「・・・アオイ・・・さん・・・!」
レイの体はボロボロ、HPも数ドットを残しているだけだった。
「・・・こんな無茶して・・・」
「・・・私・・・足手纏いで・・・それが嫌で・・・!」
レイは涙を流し、訴えた。
あのときのことか・・・
私が手も足も出ずに負けた相手。
ランがその身を悪魔に堕としてまで手に入れた力で、倒した相手。
『銀水晶ノ巨人・最終個体』
私はレイにポーションを渡して、手を差し出す。
「立てるよね」
「・・・はい!」
合流した時のアレで何体かは倒せたけどまだ三体残ってる。
「私が壁役をするからレイは隙を見て仕留めて」
「でもアギストレングス型のアオイさんに壁役は・・・」
「・・・大丈夫、こう見えて装備は頑丈だから」
「ふふ、なら絶対勝てますね。生きて帰りましょう。帰ってランさんのお見舞い行きます」
「手土産はミスリル鉱石かな」
私は黒刀を抜き放つ。
ちょっとの間耐えてよね。
ゴーレムの腕が突き出される。
それを黒刀の表面で滑らせて回避する。
そこにすかさずレイの短剣が繰り出される。
怯んだ所にカウンターで刀身を打ち付ける。
左から来た振り下ろしをいなしてカウンターを叩き込む。
そこで場所を交代する。
スキル発動の準備を整えたレイが赤刃を幾度も繰り出す。
命の限界を迎えたゴーレムはポリゴンとなって碎け散る。
私はその間に真ん中のゴーレムの胸に焔を纏った黒刀を突き刺した。
ゴーレムのHPは一瞬で尽きて砕け散った。
「アオイさん!」
真ん中に集中したせいで右のゴーレムが両腕を振り上げたのに気付けなかった。
咄嗟に左腕で庇ってしまった。
左腕は肩から綺麗に取れて、地面と巨腕でプレスされて砕け散った。
「あたたた、また義手作ってもらわないと・・・」
私は右手だけで黒刀を振ってゴーレムの左手と右手を半ばで切断する。
「あとよろしく!」
私はバックステップを踏んで急速に下がる
短剣を空色に輝かせたレイとすれ違った。
その後は言うまでもない。
空色の斬撃が幾度となくゴーレムを切り裂き、技が終了するより早くゴーレムを死に絶えた。
レイのレベルが54に上がったのは喜ばしいことだ。
私に新たな二つ名が付いたのはそうでもなかったりする。
その名も「高速ロードローラー」
目の前の敵を無差別に轢き倒して、走り抜けたのがいけなかったらしい。
正直なところ迷惑だ。
やはりランの意識が戻ったのが一番喜ばしいことだと思う。
あのあと、私とレイは寄り道せずに町まで戻った。
そしてレイの宣言通りにランの病室を訪れた。
そしたら病室に看護師さんと医師の方が来ていて、事情を聞いてみると意識は戻ってるらしい。
だが、悪魔の力を上手く抑え込むことが出来ずに暴走と沈静化を繰り返しているらしい。
暴走を続けると体に負担が掛かりすぎて体が崩壊してしまうらしい。
暴走したらすぐに薬で眠らせて力を抑え込む事で対処しているが、そんな方法が長続きはしないと思っている。
その前に治療法を見つけたいが前例がないから打つ手がなしって感じ。
この際だからケイとかカイトとかに聞いて見ようかとも思ったが、神が人に干渉することはあまり良しとされていないのも事実だからまだ聞いていない。
頼れそうな伝は殆ど使った。
が、やはり前例は見当たらないそうだ。
時折、悪魔落ちの文献は出てくるが、どの文献に置いても患者は強大な力に耐えきれずに悶え苦しんだ末に死んだと書かれていた。
そうして文献を漁って、連絡を取ってってしているうちに一週間が経っていた。
私はとある知人からの紹介でベイグル近郊の森に来ていた。
知人が言うには『めちゃくちゃ腕のいい錬金術師が住んでる小屋がある、アイツなら治療薬を作れるかもしれない』との事だ。
その錬金術師の名前は知らないらしい。
友達の知合いから聞いたらしい。
二つ名は「青髪」
本名は知らないらしい。
最近は、ミスリルメイズの時に最前線で攻略してるのを見掛けたらしいけどその後はからっきしでちょっと前にベイグルのギルドで見た程度らしい。
そうして一筋の淡い希望を抱いて森まで来てみたものの小屋どころかモンスター一匹出てこないのだ。
「おかしいな・・・」
ザッ
前方の茂みからフォレストコックスが飛び出した。
ザザッ
直後、身長180cm強の白銀の全身鎧が巨大な袋とフォレストコックスを掴んで猛スピードで駆け抜けていった。
「あれが青髪かな?」
とりあえず追ってみる。
全身鎧は未だに猛スピードで森の中を駆けており、その上片手でモンスターを仕留めて袋に詰めている。
「なにあのテクニック・・・異常でしょ」
そして暫く走り続けると小屋が見えた。
「ホントにあった・・・」
無いと思ってた訳じゃないけど、ここまで探して見つからなかったからてっきりデマを渡されたのかと疑った。
全身鎧は小屋の中に入って行った。
とりあえず私も小屋に近づくと、小屋からからの袋を持った全身鎧が出てきた。
「どうもはじめまして」
全身鎧は何処からか剣を抜く
「えっ、いきなり戦闘!?」
私は焔と氷の代わりの刀を抜く。
そして構えるや否や、膨大な質量が私を襲った。
さっきまでの数倍の速度で飛び出した全身鎧がそのままの勢いで剣を振り抜いたのだ。
刃じゃなかったから上半身と下半身はお別れしてないが、吹っ飛ばされた衝撃で木を何本か折ってしまった。
「アフッゲホッゲホッ・・・」
吐血が止まらない
内蔵が幾つかやられてしまったらしい。
「ゲホッ・・・つよい・・・」
手加減した結果私は身動きが取れなくなっていた。
始めから呪刀を使えば良かった・・・
神の力を使えば良かった・・・
後悔は尽きないが死はこんなにもあっさりと訪れてしまうものかと・・・少し笑えてきた。
転生して、ランにあって、無双して、レイにあって、無双して、レンさんとソウジ君とミスリルメイズを攻略して、負けて、ランが怪我して、レイを助けて、駆けずり回ってやっとの思いでここまで来たのにな・・・
全身鎧が歩いてくる。
殺されるのか・・・
そこで私の意識は途切れた。