緑の気持ち
地面に激しく叩きつけられた緑は意識朦朧としていた。
それでもなんとか立ち上がろうと、もがく。
その地を這う姿を上から眺めていたネメシスは緑に問いかけた。
「お前と私の力は近しいと言ったが、それは性質上の話であって力の差のことではない。残念だがそれは果てしなく遠いだろう。
だが、なぜお前はそう抗う?人類を守るためか?英雄にでもなりたいのか?」
緑は全身の痛みに耐えながらも立ち上がり、答えた。
「そんなことはどうでもいい。もし、この世界が――人類が滅びようとも、もう関係ない。俺はエリオットさんを消し去ったお前とバーンさんやレミさんを置いてけぼりにしたエリオットさんに腹が立っているんだ。」
緑の答えにネメシスは呆気にとられた表情を見せた。
そして、すぐに我に返ったように表情を戻した。
「君は少し変わっているな。死を願ったのは彼自身だ。彼の子たちにとっては辛いだろうが、君には何の関係もないだろ?身内という訳ではあるまいし。」
神ネメシスはこの時、自分が珍しく人間というものに少し興味を抱いていたことに気づいていなかった。
「そんなの関係ない。ただ俺自身がムカついたんだ。それ以外に答えなんてない。」
緑のそれは本心だった。
自分でもなぜ腹が立っているのか上手く説明なんてできない。
エリオットの気持ちもある程度は理解しているし、赤の他人の自分が怒ることでないことも分かっている。
それでも腹の奥底から沸き出るような熱いマグマは止めようがなかった。
緑は立ち上がり再び、全身に鎧を纏った。
手には直毘刀。
恐らくはこれが最後の攻撃になることを緑は悟っていた。
もし、この刃が神に届かなくても、もう後悔はない。
吹っ切れたように、緑はぐっと全身を低い態勢にして跳ね上がった。
「いけぇぇえ!」
緑はその一撃に全てを懸けた。
そして、それに全エネルギーを注ぎこんだ。
緑の身体はまるで流星の如く凄まじいものとなった。
神ネメシスでさえ一瞬怯むほどに。
「――良い攻撃だったぞ、緑。」
最後に立っていたのは、神ネメシスだけだ。
緑の渾身の攻撃は避けられていた。
そして燃え尽きたように地にひれ伏す緑の体は真っ白になっていた。
「最後に何か言い残すことは、ないか勇気ある人間よ。」
神ネメシスの言葉にはどこか優しさが溢れているようだった。
緑は最後の力を振り絞り一言発した。
「……人間は最高だ。」と。




