共同戦線
エリオットとマチルダの間で協定が結ばれてから、およそ一週間が経とうとしていた。
その間、緑はバーンやレミと共に異変者を正常化する戦いを続けていた。
前と変わったのは彼らが共に戦い、協力してくれていることだった。
「そっちに行ったぞ紫野!」
「分かってるよ、くそ兄貴!」
緑が直毘刀で異変者を正常化させるためにマチルダの手下たちは緑の手伝いをしているのだが、それは想像以上に良い効果を緑たちにもたらしていた。
まずは異変者の発見、そして拘束、更には正常化した人々の避難所への送還。
これがとてもスムーズにいっていた。
その甲斐あって、この周辺では殆ど異変者を見つけ出すことが出来なくなっていた。
「そろそろ範囲を広げていかないといけない時期かもしれないな。」
「そうだな、緑とあいつらの活躍はでかいな。俺らあんまり役に立ってないかも。」
バーンとレミは大きな不安に駆られていた。
それはエリオットが言った第三波――終末の声である。
どうやらマチルダを始めとする一派には、あの神の声が届いていなかったという。
だが、もしも今その声が響き渡って緑が異変者へと堕ちてしまえば、もはや成す術がなくなる。
つまりゲームオーバだということ。
いくらマチルダやエリオットに影響を及ばさなかったとしても、異変者を正常化へもどす手立てが失われてしまえば一巻の終わりである。
そんな恐怖にバーンとレミは苛まれていたのだ。
しかしそんな緑と紫野はどこか楽しみながら行動を共にしているようにも見えた。
「おい、ちゃんと見ろよ紫野。」
「見てるって。兄貴こそ周りをよく見なよ。囲まれてんぞ。」
これまでの日常では、この兄弟にまともな会話はなかった。
それがこの非日常の世界で関係が改善されるとは、皮肉としか言いようがない。
それでも二人は己がやるべきことをやった。
共に同じ方向へと向いて進んでいたのである。
その日の戦いが終われば兄弟は別々の帰路についた。
「じゃあまた明日な。」
「お疲れさん。」
アジトに戻った緑たちを出迎えたのは凛香だった。
「お帰り緑君。今日は紫野君と喧嘩とかしてないでしょうね。」
「う、うん大丈夫。仲良くしてたよ。」
「それなら、よろしい。」
緑は凛香の格好に触れることが出来なかった。
いつも通り制服を着ているが、この日はその上からピンクのエプロンを着けていた。
「あの、凛香ちゃん。もしかして料理してたの?」
「えっ、そうだけど。変?」
緑は知っていた。
凛香の料理の腕がいまいちだということを。




