一方その頃
エリオットと紫野の交渉が成立したまさにその頃だった。
緑は鎖に繋がれ、囚われの身の状況に陥っていた。
「あの、これ外してもらえないかな。痛いんだけど。」
「駄目だ。マチルダ様の許しがなければ外すことはできない。」
緑のお目付け役をしているのは、緑と同じ歳くらいの男だった。
薄暗い部屋に緑とその男だけがいた。
他の者はおそらく別の部屋にいるのだろう。
時折、笑い声がこの部屋にまで響いてきていた。
男と緑は口を開かずに、ただ時間だけが静かに流れていった。
そして、それからしばらくの時が経った頃だった。
突然、緑のいる部屋の扉が開き、女が一人入ってきた。
その人物こそ、彼らを束ねるリーダーのマチルダだった。
「緑、気分はどう?お腹空いてないかしら。必要なら何か持って来させるけど。」
「……要らない。」
「そう。それよりも一つ貴方に聞きたいことがあるんだけど。」
マチルダは見張りをしていた男に目で合図を送った。
男は部屋を出ていき、この空間には緑とマチルダだけになった。
「で、何なの貴方?」
「いや何なのって言われても困るんだけど。どうでもいいけど、これ外してくれないか。」
緑は自分の手足を拘束している鎖を見ながら言った。
「外してあげてもいいけど、私たちに危害を加えないと約束できる?貴方の変な能力のおかげでうちのメンバーの一人が手傷を負っちゃって困ってるのよ。」
「あれは君たちが先に手を出してきたから――分かった約束する」
マチルダが緑の言葉を信じたのかどうかは不明だが、彼女は緑の鎖を外してあげた。
その行為に緑は正直なところ驚いた。
まさかそんな言葉だけで信用してくれるとは思ってもみなかったのだ。
「それで、あんたのその訳の分からない能力はいったい何なのかしら。」
緑はマチルダに全てを話そうと決心していた。
自分の開花した能力のことを話したところで、特に影響はないと判断してのことだった。
「――そんなことがあるのね。私もまだまだ勉強不足だわ。この世の中で私が知らないことがたくさんあるなんて、なんだかドキドキしちゃうわ。」
「俺は正直に話したよ。次は君の番だ。君たちは何者なんだ?俺の弟の紫野になにをしたんだ。詳しく話してくれ。」
緑は不思議な気持ちになっていた。
マチルダたちと一戦交えたのは確かなことだ。
だが、なぜか敵という気がしなかった。
だからこそ緑は腹を割って彼女と話したいと本気で思っていたのだ。
「……いいわ。私も話してあげるわ。」
マチルダも緑と同様、少なからず同じ気持ちでいた。
彼がどうしても敵だとは思えなかったからだ。
それで自分のことや紫野について全てを語ったのであった。




