弟
エリオットの問いかけに紫野はすぐさま反論をした。
「確かに俺たちが生きていくには生き血が必要だ。だけど、それは俺たちの血を共有しあっても充分補える。だから人を襲うことなんて滅多にないんだ。」
「じゃあ何で異変者達を襲っていたんだ。血を吸ってただろ?」
バーンの言葉にも紫野はまたしても反論した。
「あれは普通の人間ではなかったからだよ。あいつらがどこから現れてきたのかは知らないけど、人を襲ってたんだ。だから俺たちはあれを駆逐しようとしていただけだ。」
確かに異変者が普通の人間と思う者は少ないだろう。
それにいくら、普通の人間が異変者になったことを知っていたとしても、襲ってくる彼らを倒すこと以外考えようがないだろう。
それは仕方のないことなのかもしれない。
だが今、ここには異変者となってしまった彼らを元に戻す能力を秘めた緑がいる。
だからこそ、異変者を無闇に駆ることは間違っていると言わざるを得ない。
そのことをエリオットは丁寧に紫野に説明した。
さすがにそのことについて紫野は驚くと同時に一言呟いた。
「やっぱ兄貴はすげえな……。」
その紫野の横顔に凛香は気になっていたことを思いきって聞いてみた。
「し、紫野君。さっき自殺志願者って言っていたけど……紫野君もそうだったの?」
紫野は苦笑いを浮かべてから凛香に言った。
「――そうだよ。俺なんて生きていても何の意味もないって、ずっと思っていたからさ。」
そんな紫野の発言に凛香は心から悲しさが込み上げてきた。
「そんな……。」
「でも、今は生きてて良かったって心からそう思うよ。仲間の皆やマチルダ様と俺は生きていくんだ。だから、俺のことはもうほっといてくれないかな。」
紫野の言葉に嘘偽りはなかった。
それが彼が決断した生き方だったのだ。
「なるほど。君は素晴らしいよ、紫野君。そんな若さで自分の生き方を決めてしまうなんてね。だけど、心配している家族があることも心のどこかに置いておかなければならないよ。」
エリオットの言葉にはどこかしら重みがあった。
それに紫野も気づいている。
だから、素直にコクリと頷いた。
「それから、もし良かったらそのマチルダ様って方に会えないかな?緑君も返してもらわないといけないし。」
紫野は一瞬躊躇った表情を見せたが、
「分かった。」と、了承した。
「ただし、マチルダ様に会いに行くのは俺とあんただけだ。」
「うん、構わないよ。それじゃあ交渉成立だね。」




