謎の集団
バーンとレミは間違えて連れてきた緑の弟、紫野をとりあえずアジトへと連行した。
予想に反して彼は抵抗することもなく素直にそれに応じたのだ。
アジトへと戻った三人を見て一番驚いたのは凛香だった。
「紫野君!?どうして紫野君がレミさんたちと一緒にいるの、緑君は?」
「り、凛香?なんでお前がこんなとこに。」
混乱している凛香と紫野にレミは詳細に説明をした。
「そんな……緑君大丈夫かな――。」
「兄貴は大丈夫だよ。マチルダ様はそんなに乱暴なことはしないぜ。」
「そんなこと言ったってよ、お前らいきなり俺らに襲いかかってきたじゃねえか。充分に乱暴だと思うぜ俺は。」
バーンの言ってることに間違えはなかった。
その為、レミも何も言うことが出来なかった。
本当ならば、凛香を安心させてやりたいところではあるが、バーンに反論出来なかったのである。
「そうだ、ねえ緑っちの弟君――。」
「『しの』だ。」
「そうそう紫野君さ、なんで私たちを襲ってきたの?」
レミの質問に紫野は困った顔をしながら答えた。
「あれは何て言うか、マチルダ様の戯れだ。本気でお前たちをどうこうするつもりはなかったはずだ。だけどお前たちが銃なんか持ち出してくるから、つい皆本気になったんだと思う。」
バーンとレミは顔を見合せた。
「なあ、そもそもお前らっていうか、そのマチルダって何者なんだ?」
紫野は考えるように天井を見つめながら少しの沈黙を保った。
それからゆっくりと息を吐いてから答え始めた。
「マチルダ様は命の恩人だ。俺たちは全員自殺志願者だったんだ。」
その発言に凛香は驚きのあまり声が出なかった。
「この世で生きていくことに絶望した俺たちを救ってくれたのがマチルダ様だ。あの人の血を与えられ、俺たちは普通の人間ではない生き方を得られたんだ。」
紫野の話しに一同は呆然とさせられた。
とても信じ固い話ではあるが、今のこの混沌とした世界ならば、それも信じるに値するのかもしれない。
「もう少し、その話を詳しく聞かせてくれないか、紫野君。」
そこにエリオットが現れた。
彼の顔は好奇心に満ち溢れているよう思えた。
「あんたは?」
「私はエリオット。そこにいるバーンとレミの父親さ。」
紫野は少し警戒心を覗かせていた。
エリオットに対し、何かしらの力を感じたからなのかもしれない。
「さっきまでの話を聞いている限り、マチルダさんというのは所謂、吸血鬼の類いだと考えれるが、どうだい間違っているかい。」
「……いいや、正解だよ。マチルダ様本人がそう言っていたからな。」
「おお!やっぱりそうなんだ。私も噂にしか聞いたことがなかったから、実物を見ることができるとは。」
エリオットは興味津々で紫野を眺めた。
「言っとくけど、俺なんてマチルダ様の足元にも及ばないからな。あの人は不死の存在だけど、俺たちみたいな半端者は普通の人間より少し長生き出来るだけらしいからな。」
その紫野の言葉にエリオットは瞳を輝かせながら、訊ねた。
「それで、君たちは人の生き血を啜って生きているのかい?」




